現代技術から21世紀の展望へ
by shichio_kawai
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ
最新のコメント
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
おすすめキーワード(PR)
ファン
|
2011年 01月 01日
世界はデフレ時代に入った。インフレ時代に過剰投資を行った国は、深刻な被害を受け、改革を余儀なくさせられている。国家も、企業も、個人も、その負担が国民生活への負担となっている。 デフレは、農民を含めて生産者には厳しい時代となるが、外食や衣料など、あらゆる消費物価の下落が始まり、消費者にとっては有難い時代なのである。しかし日本のマスメディア、政治家は、従来通りの生産者の立場に立ち、消費者の視点を持たないために、デフレと円高は悪と主張する。 私の意見は英エコノミストの本論文と違って、デフレが社会発展の原動力、つまり経済停滞の原因ではないと考えている。また、円は独歩高である。そもそも、為替レートが高いのは、経済のファンダメンタルスがしっかりしているのが原因であるとされているのだが、現在の円高は不景気の原動力とする見方は、は経済の一般原理と矛盾する。現在でも、円高は世界が評価しているからである。アメリカは、リーマンショックの打撃を受け、深刻な経済破たんを続け、ドル安である。ユーロは、ドル以上に安い。これも経済が悪い以上、どうすることもできない。日本政府1人が悲鳴をあげてもどうにもならない。 エストニアも、統一通貨ユーロ採用へ最終段階に行った(昨日、エストニアの親友からその経過を教えてくれた)。財政の健全化、過剰投資の削減など、厳しい対応策が求められている。いままで、のんびりしていただけ、厳しいことになる。適者生存の淘汰と破壊と創造がなければ経済は発展しない。それがあるから自由な資本主義は強いのである。デフレはそれをいっそう強力に推進する。インフレ時代は作れば売れた。どんな駄目な企業でも、生き延びるが、デフレ時代では、経済の自然な競争が、駄目な企業を淘汰する。淘汰がなければ、経済の発展は停滞する。倒産と失業は、資本主義発展のけん引力となる。 英エコノミストは、本論において、日本の停滞は人口減と、それを補強するための生産性の改善は力不足であるという。そして解決の道は示されていない。私は最後に、英エコノミストと違って、デフレが技術革新を引き起こし、経済発展の基礎を作ることを指摘する。つまりデフレは発展の基盤である。
英エコノミストは、人口の減少は、かってのような経済成長の再開とデフレの克服を難しくする、と指摘している。日本経済は第2次世界大戦後の数十年間、新しい世代が労働力に加わるのを背景に安寧を謳歌した。本田応一郎や森田昭夫といった企業家が未来を築き始めた。男爵夫人だった加藤シズエが新しタイプの国会議員になり、産児制限の法律を誕生させた。 しかも、コンドームが広く行き渡るようになり、出生率は1947年から1957年にかけて半分に低下した。このことは、養わなければならない子供の数が減る一方、給料が増えることを意味した。生産年齢人口が1950年の5000万人から1975年の7500万人へと増加するにつれ、貯蓄が増加し、企業はこれを元手に恐ろしいほどの急成長を遂げた。これが1990年までの日本経済の大まかなパターンである。 日本経済が失速し始める直前の1995年に生産年齢人口は8700万人で頭打ちとなり、それ以降急減している。現在のトレンドが続けば、20年後はピークンくらべて2000万人減ることになる。2050年には5000万人の大台を割り込み、1世紀かけてほぼ完ぺきな正規曲線(経年変化が左右対称の釣鐘状のカーブ)を描くという。同様な労働者の減少を今後経験するのは、先進国でドイツだけだ。 経済成長の源泉は主に2つあり、そのうちの1つが労働力である。労働者の数が減る中で生産の水準を維持するためには、労働や1人当たりの生産高を増やさなければならない。「オリエンタル・エコノミスト」のリチャード・カッツ氏は、日本企業は過去20年にわたって労働を時間で代替してきたため、労働時間が減少していると指摘している。「1991年以降の日本の国内総生産(GDP)成長はすべて生産性の向上により達成されている・・・もし日本がより高い成長率を望むなら、生産性を高めなければならない。この人口構造で移民を受け入れないなら、そうする意外に道はない」 だが、「労働者の減少を相殺できるペースで生産性を高めることができなければ、生産は減少し、生活水準は低下する」今のところ日本の労働人口の減少はまだ加速している。おまけに、日本は2008年の世界金融危機の悪影響から完全に立ち直っていない。その意味では、「失われた20年」と称される1990年以降の日本経済の停滞は異常な事態でなく、これから生じることの前触れかもしれない。
さて、これから私のコメントを述べる。同じ英エコノミストの前の編集長であり、日本人の真の友人であったビル・エモット氏は日本の生産性とロボットの関連性について議論をしている『日はまた昇る』。ビル・エモットは1990年代に日本の生産性が低かったのは、企業が労働者を解雇する代わりに温存し、大企業の過剰な多様化が実施されたからだとみている。 しかし、生産性向上のために日本は有利な手段を持ってる。それはロボットの利用である。日本は他の先進諸国にさきがけて機械化を進めてきた長い歴史がある。中国の労働力も考えられるが、中国は独裁国であり、格差・貧困、環境など深刻な国内的矛盾を抱える。中国は生産性が低く、日本人にとって管理が難しく、知的財産を盗まれる。日中の政治関係は今後もぎくしゃくし続ける。言い換えれば。独裁国家中国と民主国家日本・アメリカは冷戦状態にあると言ってよい。味方ではないのである。資本コストが低いままであれば、ロボット導入など機械化が有利である。特に、デフレ時代は過剰資本が発生するので、生産性向上のための投資を行うべきである。 日本の製造業は非常に技術水準が高く、技術革新に熱心な国である。人口が減少するとなれば、今後も高水準の設備投資が続くであろう。日本にとって希望が持てる分野は材料、部品、資本財、宇宙産業、環境技術、ナノテク、工作機械やロボットである。 しかも、日本の政治的・経済的状況は技術革新に適している。日本では不況期でさえ、GDPの3.1%が研究開発費に使用された。アメリカでは2.8%、EUでは平均1.9%である。日本のエレクトロニクスは、将来細胞レベルまで微細化するという日本の技術の特質が生かされるであろう。 引き続いて、19世紀のデフレ時代の技術革新から現在を考える。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2011-01-01 18:34 | 技術・経済
2010年 12月 24日
民主党の内部は、菅首相、岡田幹事長らと小沢派の厳しい党内闘争が続き、分裂必至の状況になってきた。岡田、菅、仙石、前原らは小沢の金権政治を切らない限り、支持率の回復はなく、このままでは小沢と、心中になり、誰も生き残れない。それだから、政権の命運をかけても、小沢の古いカネと政治との関係にけじめをつる決意である。
英エコノミスト誌の論評(2010.11.20)によると、日本の政治の最大の問題は政治の指導力不足という。確かに、過去20年間に14人もの首相がいたが、大半は記憶に残らない。在任期間が平均僅か1年半の政権が差し迫った経済危機や不況に対処できなければ、人口動態のような緩やかに進行する重要な問題を避けたのも驚くにあたらない。政治学者によると保守系の強力な支持者が高齢者であるので、政治階級全体が人口減の問題を避ける。さらには、「世代間の問題」は、すべての政党が避けてきた。彼らは、今も無意識のうちに、20世紀の人口構成と一体となっている」 しかし、最近、政治に僅かな光明が見えてきた。2009年9月、民主党が圧倒的な勝利を得て政権の座に就き、一党支配体制に終止符を打った。やはり首相経験者の父もしくは祖父を持つ首相が4代続いた後、菅氏は親族に政治的コネを持たない初めての首相となった。元弁理士、サラリーマンの息子である菅氏は、自民党の中核的支持基盤となってきた地方の高齢有権を凌ぐ勢いを見せる都市部の中年層の有権者に影響力を拡大した。実は、元小泉首相が郵政選挙で大勝したのも都市部の圧倒的な支持を得たからである。岡田氏は呉服店岡田屋の次男、前原氏の父親は京都家庭裁判所の総務課庶務係長に過ぎず、古い政治家の経歴と異質であった。 64歳の菅氏は、若い政治家ではないが、日本の政界の世代交代を反映しているように見える。世代交代の流れは、9月の民主党代表選挙にも鮮明に表れた。最大派閥を率い狡猾な古狸の小沢が菅氏を蹴落とそうしたが、民主党の一般党員によって決定的に退かれた。 民主党の理念を理解するのは容易でない。同党は財政保守主義からファビアン流の社会主義、親米派から中国シンパにまで、さまざまな理念を持つ利益集団の寄り合い所帯だ。政権を取って以来、官僚の権限を減らすという公約は、ほとんど前進が見られない。民主党の中にも、経済自由化を支持する議員がいるが、自民党の改革派だった小泉氏の市場主義政策を攻撃せざるを得なくなり、沈黙を守った。 菅氏は、強力な成長重視政策によって生じる潜在的な痛みを和らげるセーフティーネット拡充に重きを置いている。だが、表面上の理念の混乱の底流には、必死に顔を出そうとるリベラル的傾向が潜んでいる。「民主党は、体制順応やリスク回避の姿勢が今より少ない社会を目指している。これに対して、自民党は官僚を介して社会全体をコントロールしようとした」 別の政治学者は、日本の政治交代は国民主権の台頭を映し出したものだと考えている。国民が古い体制の転覆を求めたために、2005年と2009年の投票率は1990年代を上回ったと指摘する。「一般国民の政治参加が無言の服従に取って代わろうとしている」という。この傾向は、大阪府知事の橋本氏、自動車の街ではアロハシャツ好きの河村氏の政治行動に見られる。しかし、この動きは、国政レベルでは起きていない。 民主党のねじれ国家の政治的窮地を考えると、今後2~3年間の経済政策は「ごまかし、ごまかし、何とか切り抜けようとする」、たとえ、そうなったとしても、迫りくる人口問題は、菅氏がつかみ取るべきチャンスを与えてくれる。菅氏が、日本の有権者に、現在の有権者のみならず、子供や孫の将来を確かなものにするためにも、劇的な変革が不可欠であると説得できれば、昨年の選挙も日本の歴史の転換点だったように見え始める。
先に述べたように、岡田幹事長。菅首相と小沢の抗争は、権力慾が激突しながら、世代交代を迫る可能性がある。岡田、菅、仙石、前原は、小沢を切らない限り、支持率の回復もないし、このままでは小沢と心中になり、誰も生き残れないと確信している。だから、政権の命運を賭けても小沢と決着をつけなければならないが、小沢ガールズでさえ、無視できず、その実行が難しい。「俺を切る気だな」くらいは、小沢はとっくに分かっている。素知らぬ顔で対応、双方とも和戦両様の構えだ。小沢は、根回しをしない、正攻法の原理主義者岡田を、苦手としている。誤魔化しようがない。先の見える人物で、混沌とした政界は頑固一徹、単純明快なやり方でないと、再建できないという信念を持っている。やがて、必ず政界の中心に立つ人物になる。 小沢は党の要請に応じる意思はまったくない。今更、何を言っても、国民は納得しない。しかも、検察審査会の2度の議決で、必ず追訴される。党の要請に応じると、裁判での追及に不利な材料を提供するだけと考えている。事件の内容は政治家にとってどうでもよいことだ。そんなことに、こだわっていると政治などできない。そう考えている。カネは必要だから、陰でどんなカネが動こうと仕方がない。悪いことをしなければ政治活動はできない。これが古い政治家、小沢の本音である。 検察審議会の議決で、民間の弁護士が検事役に指名されて、活動を始めている。小沢はこの3人の動向を最も気にしている。指定検察官は民間の弁護士だから、大物政治家に何の譲歩も必要ない。小沢は取引を持ちかけようがない。政治家との人事の取引は常識である。何があったのか。検察審査会の決議での検察の再捜査は、小沢への2度の再聴取だけで済ました。異常である。完全な特捜の手抜。検察一体の原則で、上が決めた範囲以上の捜査はできないし、絶対にしない。しかし、指定された弁護士3人はやる気十分である。具体的事例について、裁判所の判断が「証拠不十分」になることはありうる。それでも政治家の政治力は決定的な打撃を受け、政界の浄化作用になる。これが民主党の世代交代の実態である。 野党にも力を感じられない、脳死状態である。政局が動くには、来年の3月から4月、地方選で民主党が惨敗した後である。菅政権が予算関連法案の国会通過に行き詰って、内閣総辞職か解散しかなくなったときである。小沢は、1月か2月に起訴されて、事実上、政治生命を断たれる。そして、北朝鮮がいよいよ断末魔のときを迎える。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-12-24 18:34 | 社会
2010年 12月 21日
『The Economist』はロンドンで、1884年から発行され、現在までも続く、週刊経済紙である。19世紀の技術革命とデフレ、そして20世紀の戦争と革命の激動期を見つめ続け、現在、経済のグローバル化の大きい変化を分析し、正確な見通しを発表し続け、欧米の経済界に強い影響を与えてきた。それだからこそ、1884年から126年間も続いたのである。 2010年11月20日―26日号で、現在の日本の特集を行い、示唆に富んだ指摘をしている。この特集の中で、私が関心を持った論文のいくつかを紹介し、私のコメントを述べる。と言いうのは、日本のマスコミは、縦の文章しか書かないために、海外の批判を受ける機会がないために、日本人は国際的な視野で、国内外の情勢を判断できないためである。 日本の最大の課題は、歴史上存在したどの国よりも速いペースで高齢化しており、経済と社化に深刻な影響を与えている点にある。では、なぜ日本は適応するための手をほとんど打っていないのか。何も手を打たないときの日本の未来を見たければ、夕張市を訪問するのがよい。かっては炭鉱の町として栄えたが、4年前に360億円の負債を抱えて破たんした街である。炭鉱が稼働していた40年前、夕張市には12万人が暮らしていたが、炭鉱は閉山し、現在は1万1000人が残るのみで、しかもその半数近くが65再以上である。過去4年間に、市役所の職員は半減し、給料は1/3削減された。夕張市は借金返済のために、18年に及ぶ緊縮在政に取り組んでいる。市立図書館は閉鎖され、6校あった小学校は1校に併合された。 夕張市のように、日本の人口動態は大きな渦に向かって進んでいる。日本は世界一高齢化の進行が早く、史上初めて自然要因で人口が急減し始めた国である。日本の年齢中央値(44歳)と平均寿命(83歳)は世界有数の高さで、出生率(女性1人当たり1.4人)は世界最低の部類にいる。現在1億2700万人いる日本の人口は、今後40年間で3800万人減少すると予測されている。2050年までに日本人の10人に4人は85歳以上になる。東京などの大都市は今のところ人口が増えているが、数十年もすれば、老いて見える。 日本経済の成長の見通しにとってもっとも重要なのは、生産年齢人口の減少である。大2次世界大戦後の約50年間は、急速に増える労働力と、勤勉な労働者の生産性向上が組み合わさって、奇跡の成長を生んだ。親子2世代の間に労働人口の増加が年3700万人増加し、日本は戦後の焼け野原から世界第2位の経済大国へとのしあがった。 今後40年間で、そのプロセスは逆転する。生産年齢人口は急激に減少し、2050年までに1950年代の市場水準以下になる。日本の生産性が労働力の縮小ペースよりは速く向上しない限り、日本経済は縮小する。 このようにして、日本は、世界中の大国がどうやって高齢化と人口減少に対処するのかという先例になるだろう。西欧諸国は、日本ほど急ピッチではないとはいえ、すでに生産年齢人口が減少している。東アジア諸国も熱心に日本を観察するはずである。日本はかって、V字型の隊列を作って群れの先頭を行く雁と呼ばれた。しかし、日本は今や「最高年齢の雁」だ。しかし、韓国と中国の労働年齢人口も間もなく減少し始める。 日本おける高齢化の不幸な副作用の1つは、もっとも影響を受けるのが若年層である。日本の失業率は今後も先進国の中では最も低い部類に数えられているが、多くの職はレベルの低い仕事になるだろう。定年退職期を迎えた団塊世代を支え、また彼らに続く世代が必要とする経済的機会を提供するためには、日本には漂流している余裕はない。 夕張市ではよくあることだが、年金生活者が苦しみながら電話に対応する救急車がないとき、その結末は火を見るより明らかである。幼児は言うまでもなく、寝たきりの両親の世話をする余裕がないことに夫婦が気づくとき、人口問題は社会的な大惨事になる。
国土が広大で人口が多いと、自然とその国のGDPは大きくなる。そのために、国民一人当たりのGDPが重視される。さて、移民国家であったアメリカは移民を認めてきたが、1880年代以降徐々に選択的・制限的に移民の受け入れを行った。現在、年間7万5000人の枠を設けて受け入れている。しかし、これ以上の不法移民がアメリカ社会に入り込んでいる。移民は、生活のための需要を作りだし、これがアメリカ経済の成長に大きい役割を果たしている。 フランスは、政府の手厚い育児手当の支給で、人口が増加すると言われているが、これは本当の意味での人口増ではない。フランスは、移民が生んだ子供は強制的にフランス人に帰化させられ、3人産めば、一応の最低生活は保証される。だから政府の補助政策によって、人口が増加しているのではなく、アフリカ人などが生活を維持するために、移民が増えているに過ぎない。隣国のドイツでは、民族の純血主義が厳しく守られ、外国に住むドイツ人が帰国したとき、ドイツ人として認められるが、トルコの移民の子供はドイツ人として認めない。だから、政府の補助政策による人口増はない。このように隣国の移民政策1つを取っても、大きい違いがある。EUとして統一されていると言っても、歴史的な背景の違いは極めて大きいのである。この点を日本人は理解していない。 英エコノミスト誌は、人口減よりも速い速度で生産性の向上を図るべきだと指摘している。日本は生産性の向上のために有利な条件が2つある。1つは、世界の4台の工作機械のうち、日本製が約1台を占めるほど、世界最高の生産台数を確保している。精密加工を自動的に行うNC(数値制御)工作機械の生産台数は世界の約70%を占める。ロボットは、アメリカが発明したが、1973年、石油資源のない日本が石油危機に遭遇したとき、日本は産業用ロボットの本格的研究開発に全力を挙げて、取り組んだ。目的は省エネと生産性の向上であった。現在では、世界一の生産国になり、アメリカの自動車メーカーに日本のロボットがなければ、自動車を生産できない。 アメリカやヨーロッパの職業別労働組合やドイツのマイスター制度、身分制度がロボットの普及を妨げている。イギリスのある自動車メーカーは、1つの工場の中に約50近い職業別組合がある。この組合は、電気工、機械工や溶接工の利益を強く守る。50近い職業別労働組合があれば、生産現場は固定化してします。ロボットは、機械工、電気工や溶接工の仕事を融合する。日本の現場では、溶接工や機械工がロボット運転の仕事をするのは平気である、むしろ喜んで仕事を変える。生産現場のこの柔軟性が、ロボットの普及を速めた。 今、日本の企業は生産現場をどんどん海外に移転している。日本の企業は積極的に生産ラインを海外に移し、新しい生産性の高い生産現場の創造に挑戦しないと、優れた生産性を持つ生産ラインを作れなくなってしまう。だから海外においても、生産性の高い生産ラインの組み立てに挑戦すべきである。若い人たちの仕事がないと嘆いている。国内で仕事を待っているだけでは駄目である。やはり海外で仕事を見つけ、新しい仕事に挑むべきで、海外で働くことに、恐れを抱いては、日本の失業問題と老人社会を支える人口問題は解決しない。 日本は、多くの先進国と異なり、産業の遺産を捨てていない(例えば、米国では工作機械のメーカーは存在しない)。革新的な製品を今でも創造し続けているのが、われわれに希望を与える。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-12-21 16:37 | 技術・経済
2010年 12月 18日
デフレは技術革新を生む。しかも、少ない素材と安い工費で、コストを下げる方向に動く。この動きはデフレとともに高まる。デフレ時代の経済政策はインフラの整備と拡張に全力を挙げるしか方法がない。19世紀後半の厳しいデフレが20世紀の高度成長の基盤を作った。この原則は変わらない。21世紀のデフレの中で、経済成長を達成しようとすれば、経済活動と社会活動の基盤となるインフレの整備と拡張に全力を挙げることが必要である。 2010年は鉄道の時代である。地球規模で、新幹線方式の新設、増設、拡張に力を注ぎ、中国、インド、英国、ブラジル、ベトナムは新幹線の技術を導入し、輸送の近代化、輸送能力の拡張を図っていう。アメリカでは、オバマが21世紀は鉄道の時代と述べ、3万キロの新幹線方式の鉄道の新設を検討している。新幹線が注目を集めるのは、高能率、スピード、運行間隔の短さ、安全、確実性にあるからである。 日本のリニアモーターカーは世界最高の技術水準を持っている。500キロ超の速度で、東京―名古屋間を1時間以内、東京―大阪間を1時間20分以内で走る。新幹線は、もう限界にきている、それに代わるのがリニアモーターカーであり、これは世界の鉄道の歴史に新しいページを開く。
新興国への輸出 新興国は急速な成長を遂げている。中でも中国の成長は目覚ましく、中国の自動車の販売台数は、年間1300万台、米国の2倍、日本の4倍である。中国は世界一の鉄鋼生産国であるのと同様に、世界一の自動車の消費国である。インドも同様であるが、乗用車の販売台数は日本と同じである。新興国にとって、自動車は高嶺の花であったが、中間層が生まれたために、自動車市場が著しく拡大した。 中国では、農村と都市との格差が縮小しなければ、体制が崩壊する。このために、2009-2010年に、農村に膨大な額の消費者ローンを政府が提供し、奥地の開発が急速に進めた。政府主導で経済が動くというのは、決して自由経済ではない。むしろ、中国経済には、政治が色濃く反映されている。内陸部の開発を強化するために、2009年、日本の中古の建設機械1770台が香港を通って武漢に輸出し、、武漢周辺で公共投資に使用された。中国では建設機械を1週間80時間も酷使する。もちろん中国製があるが、すぐ故障するが、日本製だと3年間は使える。日本の建設機械の販売先を米国から中国に移した。中国は世界の工場から世界の市場に転換しなければ、体制は崩壊する。ちなみに2008年には、約3万人参加した暴動が4万件以上発生していることからも明らかであろう。中国では農村と都市との格差の解消が絶対に必要であった。そのために国家が内陸部に信用の供与を行った。そこに、日本は目をつけ消費財と機材を提供し、国内の消費需要の低迷をカバーした。
19世紀も同じであった。 18世紀後半から19世紀初頭にかけての英国の産業革命がヨーロッパとアメリカに伝わり、その結果、新しい技術革新を伴って、19世紀後半、工業生産量は急増した。鉄鋼の生産が40倍、価格は半額まで下がった。さまざまなものの生産量が増加し、市場に製品が溢れて、経済の基調はデフレとなった。しかし、価格の低下は消費者には大きいメリットがある。鉄の価格の下落は、鉄の利用を著しく高めた。鉄骨、鉄筋コンクリートが発明され、高層ビルの建築が可能になり、現在の都市が誕生した。流通においても革命が起き、パナマ運河とスエズ運河が建設され、鉄道においては、アメリカ3横断鉄道、カナダ横断鉄道、シベリア鉄道ができ、商品の流通路に革命を起こした。電力網、有線・無線通信網が張り巡らされたのもこの時代であった。19世紀後半のインフラ整備が、20世紀の経済成長をもたらせた。
21世初頭 21世紀初頭も、新興国において、大規模なインフレ整備が必要で、まず鉄道から始まった。日本においては、都市の交通渋滞の解消が必要である。都内に約100ヵ所の開かずの踏切があり、これをなくせば、交通渋滞の80%が解消される。工事が始まった国道1号線と羽田行きの開かずの踏切は工期が3年間、工事費が3000億円である。だから開かずの踏切をなくすだけでも、3兆円の資金が必要である。都市の再改造と再建設に財政資金を投入すれば、需要が長期にわたって不況を補う。このための前提条件は、財政の安定化と財政赤字の縮小・消滅である。そして、都市は、その国の経済のけん引役であり、都市の効率化は、その国の経済を発展させる。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-12-18 13:50 | 技術
2010年 12月 15日
自動車業界の構造変化 自動車業界の構造変化が起こっている。それはガソリン車からEVへの変化である。2010年はEVが本格的に市場に登場する最初の年となる。構造変化の最大の要因はEVの運航コストがガソリン車の1/10に過ぎない点である。1011年もデフレが続き、物価はもちろん給料も下がる。サラリーマンは当然、運航コストの安いEVを求める。EVはデフレの進行とともに普及する。EVは高速車ではない。高速を必要としない。50キロ以下の運行は自動車の80%を占めているので、近距離運行のためには十分利用価値がある。だから近場の移動はEVで十分である。また近距離移動のために、高速道路を必要としない。現在、世界の傾向は、近距離はEVで移動する。都市間の遠距離の移動は高速鉄道を利用する。自動車より高速鉄道が二酸化炭素の排出量が少ないために、運行コストの低下のみならず、環境保全にも役立つからである。 EVは高速が出ないので、空気抵抗を小さくした流線型を必要としない。したがって、銑鋼一貫生産でのみ作れる高級鋼板を必要とせず、電炉で作った鋼板で十分である。このため、最高級の自動車鋼板の市場は縮小し、売れ行きは低下する。電炉製鋼で作った鋼板は、銑鋼一貫生産で作った高級鋼板の半値であるので、EVは電炉で作った鋼板を利用する。安いEVを大量に作れば、それが自動車業界の主流となり、鉄鋼分野と自動車分野の構造変化を引き起こす。
家電における変化 家電における変化―日本企業は生き残れるか。 家電の大きい問題は、1)消費電力の少ない製品を作ること、2)2010年に3Dテレビが市場に本格的に出てくることである。3Dテレビには、テレビ本体、ビデオ、カメラなどあらゆる機材が必要となる。さらに、劇、スポーツ、娯楽など3Dに優れた映像を提供する必要がある。そのため、テレビ会社は映画会社に変貌する。テレビ画面は大画面化60インチ以上になるともの凄い迫力の映像が映し出される。3Dテレビを安く生産し、安い価格で市場に提供できる会社は世界で数社しかない。その中に日本の会社が生き残れるかどうかは、難しい問題である。
建築業界における技術革新 鉄骨なしの鉄筋コンクリートだけの高層ビルが建設されるようになった。総武線の市川駅近くの50階建てのマンションはコンクリートブロックだけのビルである。鉄筋コンクリートだけのビルは、建築に使用する鋼材を節約できるので、工事が短縮でき、建築コストも削減できる。この建築工法は日本の技術革新の結果である。10階のビルであれば、6000-7000トンの鉄骨を使用するが、これがゼロになる。鉄骨を組み立てる建築会社は斜陽になっており、それと同時に鉄骨に使用するH鋼は1年で半値に下落した。 都心中心部のオフィスビルの空き室率は8%と大きい。不動産会社は、老朽化ビルの建て替えコスト削減を求める、削減できなければ受注できない。建築会社間の激しい競争のために、鉄骨を必要としない技術革新が必要となる。この技術はいずれ世界に広がるが、数百、数千の特許で守られているけれども、世界への拡散は速い。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-12-15 09:20 | 技術
2010年 12月 15日
自動車業界の構造変化 自動車業界の構造変化が起こっている。それはガソリン車からEVへの変化である。2010年はEVが本格的に市場に登場する最初の年となる。構造変化の最大の要因はEVの運航コストがガソリン車の1/10に過ぎない点である。1011年もデフレが続き、物価はもちろん給料も下がる。サラリーマンは当然、運航コストの安いEVを求める。EVはデフレの進行とともに普及する。EVは高速車ではない。高速を必要としない。50キロ以下の運行は自動車の80%を占めているので、近距離運行のためには十分利用価値がある。だから近場の移動はEVで十分である。また近距離移動のために、高速道路を必要としない。現在、世界の傾向は、近距離はEVで移動する。都市間の遠距離の移動は高速鉄道を利用する。自動車より高速鉄道が二酸化炭素の排出量が少ないために、運行コストの低下のみならず、環境保全にも役立つからである。 EVは高速が出ないので、空気抵抗を小さくした流線型を必要としない。したがって、銑鋼一貫生産でのみ作れる高級鋼板を必要とせず、電炉で作った鋼板で十分である。このため、最高級の自動車鋼板の市場は縮小し、売れ行きは低下する。電炉製鋼で作った鋼板は、銑鋼一貫生産で作った高級鋼板の半値であるので、EVは電炉で作った鋼板を利用する。安いEVを大量に作れば、それが自動車業界の主流となり、鉄鋼分野と自動車分野の構造変化を引き起こす。
家電における変化 家電における変化―日本企業は生き残れるか。 家電の大きい問題は、1)消費電力の少ない製品を作ること、2)2010年に3Dテレビが市場に本格的に出てくることである。3Dテレビには、テレビ本体、ビデオ、カメラなどあらゆる機材が必要となる。さらに、劇、スポーツ、娯楽など3Dに優れた映像を提供する必要がある。そのため、テレビ会社は映画会社に変貌する。テレビ画面は大画面化60インチ以上になるともの凄い迫力の映像が映し出される。3Dテレビを安く生産し、安い価格で市場に提供できる会社は世界で数社しかない。その中に日本の会社が生き残れるかどうかは、難しい問題である。
建築業界における技術革新 鉄骨なしの鉄筋コンクリートだけの高層ビルが建設されるようになった。総武線の市川駅近くの50階建てのマンションはコンクリートブロックだけのビルである。鉄筋コンクリートだけのビルは、建築に使用する鋼材を節約できるので、工事が短縮でき、建築コストも削減できる。この建築工法は日本の技術革新の結果である。10階のビルであれば、6000-7000トンの鉄骨を使用するが、これがゼロになる。鉄骨を組み立てる建築会社は斜陽になっており、それと同時に鉄骨に使用するH鋼は1年で半年に下落した。 都心中心部のオフィスビルの空き室率は8%と大きい。不動産会社は、老朽化ビルの建て替えコスト削減を求める、削減できなければ受注できない。建築会社間の激しい競争のために、鉄骨を必要としない技術革新が必要となる。この技術はいずれ世界に広がるが、数百、数千の特許で守られているけれども、世界への拡散は速い。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-12-15 09:15 | 技術
2010年 12月 12日
今年の特徴は、デフレである。沈滞したムードが日本を覆った。地方都市はシャッター通りが増え、給料はじりじりと下がり、賃金が上昇することは当分あり得ない。製造業は、国内での需要が減少したため、海外への製造拠点の移転や海外でのビジネスを行うために、海外企業への投資を積極的に行っている。政府や経済評論家は、経済政策や金融経済策によって、デフレを解消すれば、景気は回復するというが、現在のデフレは地球規模での経済の基調であって、1国の経済政策や金融政策によって解消できるものではない。デフレの原因は新興国や貧困国の安い労働力、安い土地、安い商品が世界の市場に溢れたからである。
製造業と環境保全技術 先進国、特に、日本に厳しいデフレをどう生き抜くか、どう進むべきかの指針が重要である。日本が近代化していらい、日本が強みを発揮した分野は「製造業」であり、その基盤を発展させ、「製造業」で生きる以外にない。その判断指標である特許貿易の国際収支は、平成19年に、8000億円の黒字、一方、商品輸出の出超は、平成19年8兆円である。商品貿易収支の黒字額と比較すると、特許貿易収支の8000億円は巨額である。だから世界は日本の技術に注目し、世界の経営者が日本の技術を利用しなければならないという考えが定着するのでる。 中でも、もっとも世界に誇れるが環境保全技術である。日本は、製鉄所のように、世界でもっとも早くから環境保全と経済成長を両立させた。日本のGDPが世界に占める割合は16%であるが、石炭、石油、天然ガス、原子力の一次エネルギーの消費量は世界の5%に過ぎない。世界のGDPを現在の値に保って、日本の環境保全技術を採用すれば、世界の一次エネルギーの消費量を1/3に削減できる。日本の環境保全技術はすごい技術である。1997年、京都議定書が、京都議定書となった理由は、当時の国連事務総長が、日本の一次エネルギー消費量が5%に過ぎない事実に注目して、日本が世界の環境保全技術を先導できると考え、京都議定書とした。
鉄鋼技術の大転換 日本において、CO2能排出量の40%は電力と鉄鋼業である。日本の製鉄所は、世界最小のエネルギー消費(石炭と電力)で世界最高の品質の鉄鋼を生産している。1トンの鉄鋼生産に必要なエネルギーを石炭換算すると次のようになる。産業革命当初、つまり200年前、石炭の消費量は30トン、銑鋼一貫生産開始の2世紀初頭では3トンまで減少した。現在においては、日本は0.5トン、米国など先進諸国1.0トン、中国は1.5トンと日本の石炭(エネルギー)消費量がもっとも少ない。日本では、高炉や転炉の排熱を回収して、電気に変える。その電気で工場を動かし、余った電力は会社に販売する。製鉄所は発電所、これは大きな力である。 現在、高炉、転炉を用いた銑鋼一貫生産から電炉による鉄鋼の生産への転換期にある。高炉は鉄鉱石を還元して銑鉄を作り、転炉は、転炉に酸素を吹き込み、銑鉄中の炭素を減らし、強靭な鋼を作る。注目を集めている電炉(電気炉製鋼法)はくず鉄を原料として、アーク放電という雷に似た放電を人工的に発生させ、その放電熱で鉄を融解させて酸素や硫黄などの不純物を取り除く。電炉の最大大手東京製鉄は、トヨタ田原工場に隣接して、電炉工場を建設した。エネルギー使用は石炭換算で僅か0.1トンに過ぎない。トヨタのクズ鉄は純度が高いので、これを原料にすると高品質の鋼を生産できる。この鋼材は自動車、電気工業、機械工合に供給する。くず鉄を利用したサイクルが確立すると、外国から石炭、鉄鉱石を輸入する必要が無くなる。日本は戦後、急速な経済成長を遂げ、高層ビル、各種機械、施設に膨大な量の鉄鋼材を蓄積し、国内に蓄積した鋼材は25-28億トン見られている。鋼材は時間とともにスクラップになる。高層ビルは何千トンのスクラップ、自動車は20年でスクラップとなる。 20世紀の生産手段であった、高炉で銑鉄生産、次いで転炉で鋼の生産、最後に圧延で鋼板を作る銑鋼一貫性生産の終焉が始まる。高炉では、鉄の酸化物である鉄鉱石を炭素を蒸し焼きにしたコークスで還元して 鉄を作り、転炉に酸素を吹き込み、溶融鉄中の炭素の量を少なくして強靭な鋼を製造する。電炉では、鉄のスクラップを原料とし、アーク放電を人工的に発生させ、その放電熱によって鉄を溶解し、酸素や硫黄などの不純物を取り除く。世界には膨大な鉄くずの蓄積があり、これを利用する。しかし、鉄クズを利用した、電炉を用いて良質の鉄鋼の生産には、さらに技術革新が欠かせないのは当然である。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-12-12 18:49 | 技術
2010年 12月 09日
気候変動と大気中に排出される二酸化炭素(CO2)が世界の海洋に大きい影響を与える恐れがある。海の酸性化は、大量のCO2が海に吸収されて、海水と反応して、水素イオンを発生するために起こる。水素イオン濃度が大きいと酸性度が大きい。これを化学反応で書くと次のようになる。 大気中のCO2 + H2O(海水)→ H2CO3(炭酸) H2CO3 → HCO3-(重炭酸イオン)+ H+(水イオン) HCO3- → CO32- + H+ 海水がより酸性に傾くと、サンゴや貝類などの動物は骨格や殻を作ることが難しくなる。だがより悪いのは、酸性化は殻の有無にかかわらずすべての海洋動物の基本的な生態機能を妨げる。成長や生殖といった重要な過程に悪影響がでれば、海洋動物の健康だけでなく種の生存まで脅かされる。世界の海の植物連鎖が崩れて修復不可能になるかどうかは、人間にかかっている。起源は迫りつつある。 大気中のCO2が海水に溶け込むことによって、CO2の機構への影響は幾分緩和される。大気中のCO2濃度はおおよそ390ppm(濃度の単位、100万分の1)だが、もし海が1日あたり3000万トンのCO2吸収しなければ、その値はさらに高くなる。世界の海は人間の活動で放出されたCO2の約1/3を吸収してきた。この吸収源は地球の温暖化を抑えているが、そのために海の酸性化という犠牲を払っている。 ハワイから太平洋の表層100mで、僅か15年の間に酸性度が6%上がったことを示した。地球全体で眺めると、産業革命以降、海洋表層の平均のpHは0.12下がって約8.1になった。pHは溶液中の水素イオン(H+)濃度を示す数値、言い換えると酸性度を示す数値といってよい。pH=7は中性、pH=8.1はややアルカリ性だが、pH値の低下傾向は酸性化を意味している。pHは対数で表しているので、0.12の変化は酸性度が30%上がったことに相当する。 海洋生物はこのような急激な変化を過去数百万年の間経験していない。古生物学によると、これに匹敵する過去の変化は、広範囲にわたる海洋生物の消滅につながった。約2億5000万年前、巨大噴火が起こり大量のメタンガスが放出された。同時に、大気中のCO2は倍増し、かってない大量絶滅を引き起こした。海洋生物種全体の90%以上が消え去った。その後400万―500万年間、まったく異なる海洋環境が続き、わずかな種だけが残った。 現在のペースで温室効果ガスを放出し続けば、大気中のCO2は2050年までに500ppmになり、2100年までに800ppmに達すると見積もられている。そのとき、海洋上層のpHは7.8か7.7まで下がる可能性がある。産業革命以前の時代に酸性度が150%も上がったことになる。 最も温かく塩分の少ない水の層は、海面から水深50-100mまでの部分である。ここでは豊富な酸素と日光が植物連鎖の基盤を支えていて、単細胞の植物プランクトンが日光を使って糖を作る。植物プランクトンは動物プランクトンの栄養源となる。動物ブランクトンは小さな魚に食べられ、その魚が大きな魚の餌となる。 それぞれの海洋生物は、酸性化によって、生物は体内のpHバランスの回復・維持に多くのエネルギーを費やすように迫られ、成長や生殖といった重要な過程に使うためのエネルギーを回すはめになる。海水のCO2の濃度が少し変化しただけでも、水中呼吸動物の体にその変化がすぐに伝わる。体内に入りこんだCO2は水分と反応して水素イオンを作り、体液や組織を酸性化する。 生物には体内のpHバランスを保つための仕組みがいろいろある。余分な水素イオンを緩衝する重炭酸イオンなどのマイナスイオンを作る。さまざまなイオンを細胞の内外で出し入れしてバランスをとる。だが長期にわたる低pH状態への対処法ではない。生物が酸とアルカリのバランスを回復させようともがいている間に、エネルギーが浪費されてしまう。タンパク質を合成したり、強い免疫システムを維持するという生命の基本的機能もまた、低下してしまう。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-12-09 11:36 | 科学
2010年 12月 05日
中国の軍隊は共産党の軍隊であって、国家の軍隊ではない。党の中央軍事委員会が指揮を執っている。兄弟党であろうとも、決意を固めるとただちに攻撃をかける。それが中越戦争であった。ベトナム戦争が終わった直後、中国の支援を受けたポルポト派はカンボジアを支配し、ベトナム人を虐殺した。ポルポト派に打撃を与えるために、ベトナムの精鋭部隊はカンボジアに侵攻した。ポルポト派を支援する50万人の中国人民解放軍は突如として中越国境を越えて、背後からベトナムに攻め入った。人民解放軍を迎え撃つベトナム軍は貧弱な地方軍に過ぎなかったが、人民解放軍を撃破した。ベトナム地方軍の勝利は世界の軍事専門家を驚かせた。余談になるが、人民解放軍出版社が発効した『第ニ次世界大戦戦争全史』によると、ポルポトの軍隊は民主的軍隊、ベトナム軍は反動的軍隊、人民解放軍は民主的軍隊で、民主的軍隊は反動的軍隊を打ち破ったと史実を無視して書いている。 現在、中国と北朝鮮は連携を進めているかのように見える。しかし、中国は、北朝鮮の2回の核実験の後に、中朝国境の鴨緑江と豆満江の背後に完全機械化部隊を展開させた。中国には、5個軍団の完全機械化軍団がある。そのうち、鴨緑江には第24軍団、豆満江には第42軍団を展開させている。それぞれ、歩兵2個師団、戦車2個師団、ロケット部隊2個師団、合計10万人で構成されている。毎日毎日演習を繰り返している。国境に2ヵ所だけ交易のために橋を渡れるが、そえ以外は完全に閉鎖されている。兄弟党といえども、独裁政権は、お互いに、いつ攻めてくるか疑心暗鬼、友好的な気分はない。中国は北朝鮮を信用していない。北朝鮮の核開発に強く反対している。共産党の独裁政権は、目的を達成するために、暴力と軍事力の行使を平気で行う。だから、いつ、冷戦が熱戦に転化してもおかしくない。鴨緑江からピョンヤンまで、180キロ6-10時間でピョンヤンまで進撃できる。 中国は海軍力の強化に全力を挙げている。第2防衛線を確実なものにするために、航空母艦が必要であり、その建造を開始した。旧ソ連は、5-6万トン級の原子力空母4隻を建造中であったが、ソ連の崩壊で、建造を中止した。中国はこの空母を購入、2隻は展示用に、残りの2隻は大連と青島の造船所で修理し、これを母体に航空母艦を建造する。合計4隻を作る予定である。空母は簡単にできるものではない。何をエンジンにするか、原子力をエンジンにするのは難しい。高い技術力を持たないと不可能である。艦載機は重い。燃料と弾薬を装備すると40トンにもなる。蒸気を原動力とするカタパルトで発射するが、この装置は極めて精密な機械である。平坦な甲板は米国にしかできない。英国は先端部分が上向き、フランスも同様である。中国にとって、危険物を満載した40トンの艦載機を運用することは不可能である。しかし、中国は4隻の空母を作るというのが現実であるため、性能の悪い空母でも、その軍事的脅威を無視して、東アジアや日本の安全保障を守ることはできない。 海軍は近代軍事力の重要な核心部分である。米国は11隻の原子力空母、何隻もの艦艇が空母を取り囲み、機動艦隊を作る。1機動艦隊を作るのに、200億ドル以上を必要、艦載機は200億ドル、搭乗員の養成に200億ドル、毎年の訓練に年間100億ドルと膨大な費用を必要とする。このため、米国の機動部隊に対抗できる機動艦隊を持つ国はない。 しかし、旧式の空母を持つ国は、英、仏、タイ(スペインから購入)、欲しい国はインド、パキスタンなど多数ある。インド洋に、インド、パキスタン、中国の空母が浮かべば、インド洋の平和はなくなる。 現在、日本の防衛体制は、4兆円をかけて北から西に重点を移しつつある。防衛体制を構築するには、防衛方針をはっきりされることが求められる。そして、防衛政策を基軸に、綿密に軍事情勢を分析し、冷静な議論と作業を行う。慎重な、徹底した作業なしには、防衛体制はできない。防衛体制を構築するのは政治家であり、これが文民統制である。 現在、九州の防衛を強化している。九州周辺には5000以上の無人島があり、無人島に敵の特殊部隊が侵入すれば危険である。佐世保近くの愛村の普通科連隊は、7個中隊で編成さている。通常は、5個中隊で、一般中隊が3個中隊、中火器で武装した3個中隊、輸送、後方勤務が1個中隊である。愛村の普通科連隊はホーバクラフトをもち、5000以上の無人島を1つ1つ監視している。 現在の世界の体制下では、如何に中国が軍事力を強化しても、ソ連と同じ強い国家になれない。むしろ、中国の独裁政権が消滅する圧力が増している。中国が倒れると、北朝鮮もベトナムも崩壊する。しかし、その間、熱い戦争が起こる可能性がある。われわれは、それに対する準備をする必要がある。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-12-05 17:57 | 軍事
2010年 12月 02日
独裁国家は、暴力と軍隊で国民を抑圧する。同じように、軍事力を振るって周辺国に圧力を加え、領土を拡大する。このために、独裁国家は絶えず緊張と戦争を持続させようとする。独裁政権を支えるものは軍隊であり、軍隊がもっとも信頼できる組織である。旧ソ連、中国と北朝鮮はその典型である。そのために、生活の格差、蔓延する不正と汚職、環境破壊などの諸矛盾によって内部崩壊の可能性が徐々に拡大する。だから、独裁国家は、歴史の流れの中で、一時的な存在に過ぎないのである。 20世紀の戦争、厳密にいえば、南北戦争以後の戦争は、単に軍隊間の戦争ではなく、その国の経済活動、生産活動、文化活動、教育のすべてを動員する総力戦となり、国民に重い負担を強いる結果となった。そのため、総力戦の敗者は、その国の政治機構と軍事機構とを崩壊させる結果となった。第2次世界大戦中の優れた指導者チャーチルでさえ、戦後の選挙で落選した。20世紀後半、2大軍事大国、資本主義国家である米国と共産主義国家であるソ連は、核とミサイルを軸に、総力を挙げて冷戦を戦った。熱い戦争でなくても総力戦であるため、両国民は大きい負担を強いられた。そのために、ソ連の経済は破たんし、これが敗北の大きい原因となり、独裁政治体制と軍事組織は崩壊した。20世紀の教訓は、共産党独裁国家と資本主義国家の対立は、冷戦という形で顕在化する。熱い戦争でなくても、総力戦として戦われ、極度の緊張状態が継続する。冷戦時代、一貫して熱い戦争がなくなることはなく、局地戦争であった朝鮮戦争やベトナム戦争に見られるように、冷戦は熱戦に容易に転化する。 米国は、ソ連共産党の独裁政権は崩壊すると判断し、冷戦から熱戦への転化を防ぐ戦略、すなわち新しい戦略概念である抑止戦略の構築に全力を挙げた。抑止戦略の構築とその具体化はランド研究所が行った。ランド研究所は、軍人が不在で、数学者、物理学者、科学者、経済学、心理学者などの科学者のみで核ミサイルの攻撃と防御の戦略戦術の研究をおこなった。しかも、極めて特異な点は、新しい戦略の構築に、従来の軍事常識や知識を研究に取り入れず、自由な発想の下に行ったことである。さて、ヨーロッパでは、ソ連の独裁政権が崩壊し、ヨーロッパの冷戦は終わり、NATOが残った。つまり、西側は戦争に勝った。東ヨーロッパでは、新しい政治体制が誕生し、それらの国からEUやNATO加盟国が誕生し、平和が訪れた。 東アジアには、中国、北朝鮮とベトナムの共産党独裁政権が残る。東アジアには冷戦が残り、絶えず国家間の緊張を生み出す。しかし、中国共産党をはじめとして、東アジアの共産党独裁政権は必ず崩壊する。だから、米国の基本戦略は、冷戦の熱戦への転化を防ぐことである。 オバマは、ブッシュ時代の国防長官をはじめ、軍の幹部を引き継いだ。つまり、軍事政策から個々の軍事作戦に至るまで、ブッシュの方針を継承した。継承の背景は東アジアとアフガンの情勢にある。第ニ次世界大戦後、 東アジアにおいては、中国、北朝鮮、ベトナムの独裁体制はそのまま維持されている。つまり、ヨーロッパの冷戦は終結したが、東アジアでは、冷戦がそのまま残っており、しかも東アジアでは、冷戦が熱戦に転化する可能性がある。1950年6月から始まった冷戦下の局地戦争・朝鮮戦争において、両者の死者の合計は300万人以上にも達した。ベトナム戦争は、1975年まで30年間続き、両者の死者の合計は400万人以上であった。ベトナム戦争中に起こった2週間のテト(旧正月)攻勢では、ベトナム側の死者は6万人、米側の死者は3000人であった。テト攻勢のベトナム側の指揮者は、ゲリラ戦で損害を少なくすることは不可能と発言している。 今回の北朝鮮の延坪島への砲撃は熱戦への転化の可能性を含んでいた。これに対して、圧倒的な力の抑止力として、原子力空母「ジョージ・ワシントン」を中心とした機動艦隊を黄海に派遣して、実戦さながらの米韓共同の軍事演習を実行し、北に強い軍事的圧力を加えた。引き続き、韓国は黄海と日本海において砲撃の実射演習を行い、ジョージ・ワシントンを中心とする機動艦隊は、尖閣諸島問題を考慮に入れて、日米の共同演習を行う。年内に、米韓両国は、もう一度、ジョージ・ワシントンを中心とした演習を実施する。そして、今後も、ジョージ・ワシントンを黄海に駐留させる。このように、切れ目ない軍事演習と海軍の展開は、北朝鮮の暴発と中国に対する強い抑止力として働く。 結論を言えば、東アジアには共産党の独裁国家が存在するために、国家間の対立は冷戦となり、平和的共存はあり得ない。友愛の海など夢想に過ぎない。この冷戦は、いつでも熱戦に転化するために、西側の戦略は、如何にして冷戦を熱戦に転化させないかにある。今回の黄海上での「ジョージ・ワシントン」を中心とした演習は、まさに抑止力の駆使である。 オバマは、日米安保の同盟を基盤に、冷戦ではなく、熱戦に転化した時の厳しい条件の中で、行動することを絶えず考えている。単に軍事基地を置けばよいと言った甘い考えではない。その時の戦略拠点が沖縄であり、沖縄は、東アジアにおける軍事作戦を展開する上で最大の根拠地である。沖縄を中心に1500キロの円を書くと、ピョンヤン、ソウル、大連、青島、武漢、台湾、香港、広州など東アジアの主要都市はすべて入る。このような地政学上の利点を備えているので、沖縄に強力な機動力と戦闘力を持つ海兵隊を配備する。だから冷戦が続く限り、米軍は沖縄から海兵隊を撤収できない。もちろん、冷戦が終われば直ちに撤退する。 熱い戦争が勃発すれば、第一になすべき軍事行動は、普天間のヘリコプター部隊に搭載された海兵隊をただちに敵の侵入地点に投入し、熱い戦争を消滅させる。例えば、韓国と北朝鮮の国境38度線へ。海兵隊は常に実戦の態勢をとり、議会の承認を必要とせず、大統領の命令だけで戦闘に参加できる。日本は、日米安保条約に従って、海兵隊の軍事作戦を支援する。鳩山の、沖縄基地の県外移転の公約は、軍事知識の完全な欠如を露呈したに過ぎず、首相になる人物ではない。 ヨーロッパにおける冷戦の終結によって、ロシアは日本を侵略する意図を放棄した。このため、日本の防衛の重点は、徐々に北から西に移動し始め、そのために膨大な時間と3-4兆円の巨額の費用が必要である。沖縄の西南の石垣島の住民は陸上自衛隊1個連隊の駐屯を強く希望している。ここには、長距離レーダーとそれを守る少数の陸上自衛隊の兵員が駐屯しているのみである。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-12-02 16:19 | 軍事
2010年 11月 20日
インドでは、新しいイノベーションが起きている。ボストンコンサルティンググループの「2010年調査」は最高位のイノベターに名を連ねる米国企業の数が減少し、インド企業の数が増加している。同調査は、インド企業は米国企業よりもイノベーションを重視しているとも指摘している。 どの国にも見られない独創的なアイデアのイノベーションが新しい発展の芽を作っている。もっとも印象的なのは、インド企業が「リバース(逆)」、「ガンジー風」、「フルーガル(倹約)」などさまざまな呼び名をつけた新種のイノベーションを生み出していることである。「リバース・イノベーション」は、購買力が小さい新興国を念頭に、機能本位、実用本位、虚飾を排した製品を作り、それを世界市場に売り出す。「ガンジー風・イノベーション」はガンジーのストイックな精神を体現した製品を開発する。「フルーガル・イノベーション」の代表例はタタのナノ自動車である。 タタ・グループの会長ラアン・タタは10万ルピー(約28万円)の小型車の製造を提案し、2008年に4ドア小型車「タタ・ナノ」として売り出した。スズキのもっとも安いマルチ・スズキ・800は20万ルビー、2輪車は約3.4万ルピーである。インドの新中間層の世帯の年収は9万ー20万ルピーである。「タタ・ナノ」の価格10万ルピーは新中間層の年収の範囲内で購入できる。 3種類のイノベーションの共通点は、製品の無駄な部分を省き、コストを極限まで切り下げ、必要な機能のみを持たせた製品といえる。これは新興国に大きい市場を獲得するばかりでなく、先進国へも販路を獲得するであろう。 現在はデフレ時代である。高品質であっても、高価格はでは売れない。ハイブリッド車は、最高の技術の結晶であるが、値段が高く、徐々に売れなくなるであろう。昨年末、UAE(アブダビ首長国連邦)は韓国の原発購入を契約した。理由は、原発技術は日本が最高だが、韓国の原発は価格が2割安かったからである。 日本は、研究開発の努力の結果、高品質、高機能の製品を創り上げ、高級品として受け止められた。高級品であれば、高い価格も許された。今回の経済危機を通じて、高級品であっても、価格が高ければ消費者に受け入れられなくなった。高機能・高品質・高価格では、世界市場で韓国に敗北する。国内市場で競争を繰り返しても、気がついてみれば、国際市場で敗北していた。日本は3D液晶テレビの製造を続けることができるであろうか。これに反して、インドのイノベーションは無駄を省き、虚飾を排し、低価格品に徹している。インド思想と社会様式に基づいたイノベーションであり、まさに、「ガンジー風・イノベーション」である。製品は新興国に普及し、次に先進国の市場を席巻する。これは、21世紀の経済の基調であるデフレ時代に対応した製品革命といえる。 新たな経済大国の台頭は、常に既存の経済大国に好機をもたらす一方、打撃を与える。新しい企業は古い企業にとって代わる。新しいビジネスモデルは旧来のモデルを混乱に陥れる。先進国で快適な生活を送る労働者は、貧困国のハングリーな労働者との競争を強いられる。そして、先進国の労働者の賃金は必ず低くなり、新興国では上昇し、賃金の平準化が起こる。 インドは有力な米国企業と互角に戦う新たな巨大グローバル企業を多数生みだしている。製鉄業では、アルセロール・ミタルやタタ・スチール、自動車部品ではバラアット・フォージやサンドラム・フォージなどがある。アルミニウム圧延のヒンダルコ、情報サービス分野では、インフォシスやタタ・コンサルタンシー・サービスシズ、コグニザントなど、他にも多数の有力企業がある。 20年前、インドにはグローバル企業は1社もなかった。電子都市に変身したバンガロールの住民の半数は裸足であった(当時、2回、バンガロールを訪問した。有名な物理学研究所があり、かってノーベル賞を受賞したラマンがいた)。現在、タタ・グループは売上下高の6割を外国で稼いでいる。天然資源企業から製薬会社まで、多くの産業のインド企業が米国のブランドを買収している。米国企業もインドに拠点を設けている。バンガロールやハイデラバードには米国の有力企業が集まる「電子都市」がある。 米国の労働者にとって、もっとも心配なのは、頭脳集約型の仕事がインドに流れてしまうことである。米国人は知的労働の職は維持できると考え、製造業の雇用流出をあきらめて受けいれた。しかし、彼らは2つのことを計算に入れていなかった。インターネットの威力と新興国企業の熱意だ。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-11-20 14:15 | 技術・経済
2010年 11月 19日
インドは運輸と通信サービス(主に、アウトソーシング)産業が中心となって、約8%の成長を遂げてきた。2030年までに労働人口がさらに2億4000万人増える見通しである。しかし、インドのインフラ競争力は、(参考のために中国のデータも示した。)道路:インド89位、(中国50位)、鉄道:インド20、(中国27位)、港湾:90、(中国61位)、空輸:65、(中国80位)、電力供給106、(中国61位)と極めて弱い。インフラ整備には、鉄鋼が欠かせず、現在鉄鋼需要は急増しており、10年から13年までの間に年13%の割合で増加すると予想されている。さらに、成長を持続するために、全土に眠る鉱物資源の使用に全力を挙げている。特に、オリッサ州は世界最大の鉄鉱石の産地で、ここに8ヵ所の総合製鉄所を建設する予定である。それは、鉄鋼の供給増の正否がインドの成長のカギを握るからである。 インドの経済成長が始まったのは、ヨーロッパの独裁体制が崩壊した1991年以降、ナラシマ・ラオ首相とモンモハン・シン財務相(後に首相)が自由化政策を採用してからである。ITとITビジネス・サービスのアウトソーシングは人工衛星を利用して、国際的に威力を発揮したが、工業生産は見るべきものがなかった。私は、バンガロールで開かれた日印の材料のセミナーに参加したが、インドの研究者の発表は、解説に終始して、オリジナルな研究成果がなかったことに驚いた。しかし、2003年から2006年にかけて、インドの投資は、GDPの34%に急上昇し、工業生産の伸びがITよりも早く、経済成長率は2006年―07年にかけて9%を越え、工業生産は12%に達した。 インドの格差は予想より少なく、超富裕層は人口の一部に過ぎない。世界銀行統計のジニ係数(所得配分の不平等を示し、係数が大きいと格差は大)によると、04年―05年のデータでは、インド:0.368、タイ:0.42.シンガポール:0.425、中国:0.469、マレーシア:0.429、2000年のデータは、日本:0.319、イギリス:0.326、ブラジル:0.57、南ア:0.57となっている。インドのジニ係数は、シンガポールや中国よりも小さく、インド社会は格差の意外に小さく、カースト制も徐々にしょうめつしつつある。 一般に、急成長は、農業やサービス部門の生産性の低い仕事から高賃金の生産性の高い仕事に移り、取り残された人との間に、格差が拡大する。そして、格差に対する不満は暴力に発展する。インドでは、工学博士のバスガイドがいるように、このような生産性の低い仕事から対仕事への著しい移動は起こらなかったのが、社会の安定を保った。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-11-19 22:10 | 技術・経済
2010年 11月 10日
尖閣列島問題が起きたとき、中国がレアアースメタル(希土類金属)の輸出を制限した。日本のマスメディアや政治家は日本のハイテク産業に大きい打撃を与えると、危機を訴え、政府は中国に対する毅然とした態度を喪失してしまった。英国の『The Economist』が指摘したように、中国の首脳といつ会えるかどうかに汲々とするばかりで、日本の外交の基本を見失ってしまった。しかし、国際的には、貿易の自由化が大きい流れにあるにもかかわらず、中国のレアアースの輸出抑制は、世界の動きに反すると、強い反発を招いている。 よく似た事態は、1973年の石油危機のときに発生した。石油危機は、メジャーが所有した油田を中東の国々が国有化し、中東諸国が石油の供給量削減を宣言した。このために、石油価格は大暴騰をした。マスコミは、日本は石油を輸入できなくなり、油上に浮いた日本経済は崩壊すると、危機感を煽りたてた。消費者はパニックを起こし、膨大な仮需要を発生し、店頭からガソリンなどの石油製品が消え、石油に無関係なトイレットペーパーまでも姿を消した。1973年度は、石油の輸入が始まってから現在まで、もっとも大量の石油を輸入していたのである(藤和彦著、『石油を読む』、日経文庫、2005)。それにもかかわらず、2度の石油ショックが発生したのは、マスコミの煽った危機感の結果であった。 その危機を克服するために、産業界は単なる量産から、研究開発を重視し、量産ではなく、製品の高品質・高機能化に全力を挙げ、これに成功した。つまり石油ショックを契機に日本の産業構造を変え、日本の製品の輸出競争力を著しく高めた。海外にエネルギーを依存している日本は省エネ技術の開発に全力を挙げる。世界最高の熱効率を持つ火力発電タービンやボイラーを作った。製鉄所は膨大な熱を発生する。その熱を徹底して回収し、電気に変換した。その結果、新日鉄は、外部から電気を購入する必要がなくなった。日本の二酸化炭素の発生量は火力発電所と製鉄所がもっとも大きい。この分野での省エネ技術の開発は環境保全技術の開発に直結した。生産プロセスの省エネを図るために、この時期から産業用ロボットの開発が始まり、今では、ロボットの生産量と性能は世界最高である。このような困難な産業構造の転換や省エネ技術の開発は、政府の主導で行われたのではなく、民間の血のにじむような努力の結果なのである。 同じことがレアアースメタルでも言える。まず、レアメタルの採掘と製造はインド、ベトナムなどとの友好的な協力によって進めることが決まっている。安定的な供給に懸念がある中国産のレアアースメタルは、市場原理に従って、販路を失う。 日本では、廃棄した電子機器が大量にあり、その部品からレアアースメタルを回収すれば、需要の相当部分をまかなえる。リサイクル技術は、決して簡単な技術ではない。電子機器の部品に使ったレアアースメタルは他の金属元素との化合物となっているので、他の元素や不純物を取り除く。これには複雑な化学的処理が必要である。だから、効率的で低価格のリサイクル技術を早急に開発しなければならない。 すでに電気メーカーでは代替材料の検討を行っており、日経は鉄と窒素の化合物である鉄の窒化物が検討されていると報じた。 ランタン、サマリウム、ネオジウムなど17種類の元素の総称であるレアアースメタルは強い磁性を持ち、他の金属と違った電子構造をとるために、強い磁石、発光ダイオード、光ファイバー増幅器、レーザ発信などの機器の電子部品に欠かせない材料である。このようなさまざまな性質の中で、鉄の窒化物は、強い磁性を持つために、レアアースメタルの代替材料としての研究開発が始まっている。 鉄の窒化物の原子の配列(結晶構造)は、鉄原子が横に連なった、層が形成される。層の間に、窒素原子が潜り込んで、鉄の2次元構造を保つ役割を果たすと同時に、上下の鉄の2次元層間の相互作用を抑制し、2次元構造の特徴を際立たせている。ある理論物理学者が、真空中に単独で存在する鉄の2次元層の仮想物質を考え、その磁性の大きさについて理論計算を行い、巨大飽和磁化(強い磁性)を示すことを明らかにした。2次元構造の物質は存在しないが、2次元構造の特徴を強く示すのが鉄の窒化物である。事実、この物質は、鉄原子の構造の2次元性を強く示す、巨大飽和磁化を持っていた。そうなると、当然、レアアースの代替材料としての可能性の研究が始まる。鉄の窒化物は、鉄と窒素の組成比が変わりやすく、一定の組成比の材料を作るのが難しい。さらに、この材料にさまざまな原子を混入させ、電子部品の材料として最適な化学組成の研究が必要となる。代替材料としての可能性がより強くなれば、世界で一斉に研究開発が始まる。幸い、日本は材料の科学の研究レベルは高く、レアアースの代替材料をいち早く見出し、実用化を図るであろう。このような試みは、さまざまな材料について行われ、早い時期にレアアースメタルの代替材料が見出されるであろう。。 新しい科学技術は、危機に直面して、生まれるものであって、政府の保護によるものではない。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-11-10 16:13 | 技術
2010年 11月 07日
沖縄の空軍基地嘉手納基地は、米空軍と海兵隊が使用している。普天間基地は海兵隊専用の基地である。名護市辺野古のキャンプシュワブに滑走路はなく、名護市には大型船は入れない。 韓国の米陸軍は、すでに1/3まで減らした。韓国軍に対する米軍の指揮権の韓国軍への委譲は決まっているが、まだ実行されていない。在韓アメリカ第2歩兵師団はソウルの北、すなわち北朝鮮との国境に近い第一線に展開している。国境に近い場所への展開は、「アメリカ軍は絶対に逃げない保証」を与えているのと同じである。韓国には、海兵隊がいないが、沖縄の海兵隊がカバーをしている。沖縄に、海兵隊がいなくなれば、日本のみでなく、韓国の安全保障の根幹が崩れる。だから、韓国は沖縄の海兵隊の撤退に絶対反対なのである。この重要な事実を民主党は理解できない。だから、韓国大統領は、鳩山元首相の最初の韓国訪問を拒否した。 沖縄地区の海兵隊は、戦闘部隊、航空部隊と地上部隊を合わせて約8000人が展開している。海外の米軍再編成で、地上部隊の一部と補給部隊をグアムに移動させる計画がる。グアムには、B52が離着陸できる巨大な航空基地がある。そこから大型輸送機を使えば、地上部隊はどこへでも出撃できる。 ヘリは、グアムから沖縄に飛べないから、沖縄に残しておく。海兵隊は。揚陸艦に積んだヘリとともに、現地に直行し、ヘリもっとも有効な移動手段として、直接攻撃を強行する部隊である。そのために、ヘリとともに、実際の戦闘状態と同じ装備、携帯品をもち、訓練に次ぐ訓練の毎日を送る。だから、戦闘部隊とヘリは、駐屯地と演習地が一つでないと機能しない。だから、ヘリや訓練地を徳之島に置くことはできない。普通の陸、海、空の部隊は、実戦と同じ状況下で訓練をしていない。あくまでも平時の環境下での訓練である。それだけ、海兵隊の訓練は過酷なのである。 海兵隊は、議会の承認なしで、大統領の命令だけで動ける軍隊である。本格的な戦争の起こる前に、紛争地域に即座に出動して、紛争の火消しをする。しかもアメリカの大統領だけが命令できる特殊部隊である。言い換えると、もっとも強力な抑止力である。だから、大統領のどんな命令がいつ来るかわからないので、毎日が訓練となる。 将来何が起こるか予想不能、不安定な地域の近くには、即時に対応できる軍事力が必要となる。朝鮮半島は不安定な地域で、何が起こるか分からない。その近くには、即時に対応できる軍事力が必要となる。そのために、特殊な軍隊、海兵隊が沖縄に駐留している。米国では、海軍の一部、上陸戦用の陸戦部隊として運用された、第ニ次大戦後、海兵隊として設立された。冷戦中、紛争に素早く対応して熱い戦争への拡大を防ぐ、テロ攻撃に参加した。つまり、軍隊の中で、もっとも抑止力ある軍隊と成長した。だから、沖縄から軍隊を撤退しても、海兵隊だけは残す。 軍はあらゆる仮想敵国を相手に作戦計画を立てるのが常識である。ソ連崩壊後、冷戦の構造がはっきりしなかった。しかし、中国が巨大になり、軍事力によって国の内外を露骨に支配するにしたがって、冷戦の構造が次第に明確になってきた。 近代国家では、平時の軍参謀本部では、あらゆる仮想敵に備えて作戦を立てる。例えば中国人民解放軍が北朝鮮に介入する、沖縄の海兵隊は朝鮮半島に出動する。しかし、どちらも秘密中の秘密で、発動の瞬間まで明らかにしない。沖縄の海兵隊がどのような紛争に備えているのか。具体的に語られることは、絶対にない。しかも、相手に何も言わずに、軍にやるべきことをやらせて、平然とつきあうのが外交である。民主党はこのような事実をほとんど理解できない。 つい先日、ドイツに対する戦勝記念日に、NATO軍がモスクワで軍事パレードを行った。連合軍がドイツに勝ったのは60年前、次いで冷戦で、世界は2つの軍事大国の陣営に分裂した。今年初めて、アメリカ軍、フランス軍、イギリス軍などNATOの主要部隊がモスクワの赤の広場を行進した。これは、ロシアが完全に西側の一員になった歴史的大転換を示す日であった。 中国ではこのような事態はあり得ない。胡錦濤は、金正日を招いて、「血の同盟」を再確認にした。中国は、一党独裁を維持するために、「改革開放」を唱えているに過ぎないのである。オバマは、中国を信用する気がない。それは中国の言動ではなく、「行動」からの結論である。特に、中国の増大する中国軍の動向に対する警戒はまったく緩めていない。その証拠が、沖縄の米海兵隊と第7艦隊の存在である。
註)EUでは、ドイツ軍、フランス軍など国によって軍隊の区別をする必要がなく、EU内の軍隊はNATO軍一本でよいという意見がある。これは、EU内では、お互いを敵として戦争をする可能性が消滅したからである。現に、アフガンへは、NATO軍として派遣している。これが21世紀のヨーロッパの軍事組織になる可能性がある。世界は動いているのである。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-11-07 09:32 | 軍事
2010年 11月 06日
今、世界、特に東アジアの軍事情勢が大きく変化しようとしている。まず、2010年4月8日、オバマはメドヴェージェフと第2次戦略兵器削減条約(START2)を締結した。オバマはこれを出発としてロシアと軍縮に努力することを安全保障の骨組みと考える。また今年初めて、モスクワの赤の広場でNATO軍の主要部隊が行進した。これは画期的なことで、もはや西側とロシアの対立の完全な解消を示し、ヨーロッパの安全保障が不動のものとなった。 2003年、イラク攻撃開始以来、現在ではテロ活動はほとんど終焉している。2010年3月の国会議員選挙では、テロの妨害はなく、投票率は68%の高率であった。13万人の米軍は都市を撤退し、昨年の10月以降、戦闘はなく、米軍の戦死者はゼロであった。2011年7月までに後方部隊も撤退する。イラク戦争は終わった。米軍がイラク戦争に勝ったのは大きい成果である。 ヨーロッパやイラクにおいて、軍事的緊張がなくなり、米国は東アジアに注目する余裕ができ、東アジアの安全保障に力を入れる。その東アジアにおいては、中国、北朝鮮、ベトナ3国の独裁国家があり、の独裁国家が核兵器を強化し、中国は、特に海軍力を強化し、シナ海の列島の領有権を主張し、海の支配と、そこに眠る資源の占有に動く。東南アジアの国々は、列島と海洋の支配権を中国と争い、その結果東南アジアと米国が軍事的にも接近している。インドは、中国海軍が資源の輸送ルートを確保するためにインド洋進出に神経をとがらせている。それに加えて、中国はこの数年間、棚上げ状態にある大きな領土問題(インドの領土ラダックアルナ、チャルブラデシュ州での紛争)を再び蒸し返そうと躍起になっている。これらの動きは、アジア諸国とアメリカとの関係を密にした。 アジアの独裁国家と周辺国との軍事的対立は冷戦であり、それ以外ではない。アメリカは冷戦に勝利しようと意図しており、それを通じて独裁体制を崩壊させる。その基本戦略は冷たい戦争を熱戦に転化させないことでる。もちろん、熱戦を防ぐために、局地的一撃は覚悟している。 在日米軍のうち、空軍は青森も三沢、山口の岩国、九州の築城などに、日本の航空自衛隊と基地を共同使用する戦闘部隊がある。陸軍の実働部隊は極少数で、座間に第一軍団の司令部あり、司令部機能の中軸を構成している。第7艦隊は横須賀と佐世保を母港とし、2つの港は、大型艦船の住友重工などによる修理能力を持っている。修理能力の効果は大きく、西海岸までも距離4000キロを省略してしまう。だから、原子力空母は、何年かに1度、原子炉の燃料を交換するために帰国すればよい。 日本の地政学的な重要性は、中国、北朝鮮、ロシアが太平洋に出ようとすれば、この3国の目の前に日本が手を広げ、太平洋への進出を妨げていることである。つまり、中曽根の「不沈空母」と変わっていないのである。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-11-06 11:24 | 軍事
2010年 11月 04日
モンゴルに隣接した中央アジアは天然ガス、石油、非鉄金属の鉱山が発見されている。ウラン鉱石が産出するカザフスタンは日本と原子力協定を結び、日本の技術と資金の援助によって、ウラン鉱石の精製、ウラン燃料の製造、さらには原子炉を建設し、電力確保する。そして大量に埋蔵する銅などの非鉄金属の工業を発展させる。他の中央アジアの国々も豊富な地下資源を保有しており、これを武器に世界の市場に参入して、経済の発展を図ろうとしている。モンゴルは地下資源を生かすために、草原地帯が新たな富と格闘している。つまり、草原地帯に、高速道路、鉄道、空港、電力網や水に給排システム、都市には金融システムを構築する努力を積み重ねている。モンゴルが地下資源の活用に成功すれば、中央アジア、モンゴルの一大経済圏が誕生するであろう。 モンゴル人は最近まで、自分たちのことを「巨大な金の山の上にいる乞食」と呼んでいた。モンゴルには膨大だが、大半が手つかずの鉱床が眠っていた。最近までは、労働賃金は低く、職も十分になかった。だが、最近、いくつかの大規模な鉱山開発プロジェクトが始動したことで、変化の兆しが見えてきた。それによって政府は、従来とは異なる問題に直面することになった。環境を破壊することなく、また、経済や誕生したばかりの民主主義を不安定にすることいなくどうやって健全な発展と好景気を維持するかである。 好況期の到来を疑問視する人はほとんどない。国愛通貨基金(IMF)はこの先何年も2ケタの年間成長率が続くと予想しており、2018年までには現在わずか2000ドルの一人当たりの国内総生産(GDP)が4倍に増加すると考えている。 モンゴル南部のゴビ地域にある2つの鉱山が、新たな富の大半を生み出すと期待されている。そのうちの1つ、昨年採掘が認可されたオユトルゴイ鉱山では、推定埋蔵量40000万トンの銅や金を採掘する。もう1つはタバントルゴイという既存の炭鉱で、最近採掘設備が増強され、主要取引先である中国につながる道路や鉄道も新たに建設された。 モンゴル政府は、今回の開発ブームによって大きな利益を享受することになる。同政府がオユトルゴイ鉱山の権益の3分の1を所有しているからだ(残りはカナダ企業のアイバンホーが所有している)。だが、モンゴルのツァヒアギーン・エルベグドルジ大統領は、開発ブームは危険をはらんでいると考えており、「もし我々が、統治に問題がある悪しき制度の下で、今よりはるかに多くの所得や利益を手にすることになれば、モンゴルは困った状況に陥るだろう」と語っている。 モンゴルの政治はかねて利益誘導の上に成り立っており、政治家たちは総じて、票を得るために現金やその他の物資をばら撒いてきた。国庫が潤えば、こうした悪習を助長しかねない。また、モンゴルがソビエト連邦の影から抜け出し、民主主義が導入された直後、国有企業の民営化が急ピッチで進められた1990年代と同じように、汚職が蔓延する恐れもある。実際、今回の鉱山事業に多くの政府高官がかかわっていることから、こうした事態が生じる可能性は高い。 ほんの一握りのコモディティー(商品)に依存した経済は、価格のショックにも影響を受けやすい。そのため新たに財政安定法が採択され、予算管理を目的としたコモディティー価格の指数が設定された。コモディティーの価格が指数を超えると、超過収入は「安定基金」に蓄えられる。価格が下がれば、政府は歳出を賄うために同基金を活用できる仕組みだ。 ほかにも予防策が講じられている。1つには、新たな汚職防止法案が可決された。さらにエルベグドルジ大統領は、観光や金融、アウトソーシングなど、非鉱業セクターへの投資を促進すると明言している。大統領によれば、GDP(国内総生産)に対する鉱業の寄与度が今後20年間で、現行水準の70%から20%まで低下するという。 とてもそうなるとは思えない。だが、前任者たちよりも学歴が高い今の指導者層は、少なくとも近く手に入る富とそれに伴う期待の高まりに対処していくジレンマを理解しているという点には期待が持てる。 穏やかな遊牧生活の過去から急いで抜け出そうとしているモンゴル。「これは我が国が、ナイジェリアになるか、それともチリになるかという問題だ」と、ある政府上級顧問は話している。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-11-04 15:04 | 技術
2010年 10月 30日
中国の大学卒業生は、想像を絶する就職難である。内陸部の大学の新卒者は、借金して沿海部の僅かの職(砂糖)を求めて、アリのように集まる。しかし、職を得ることができず、再び内陸部に帰る。大学を作りすぎたために、昨年は600万人以上も卒業して、250万人が失業した。今年6月に、600万人以上卒業したから、800万人以上が職を求めている。中国の民営企業は、大学新卒者を採用せずに、中途採用が主で、即戦力として使うので、今年は、新卒者の全員が就職できない可能性がある。来年の新卒者が就職できないと、大卒の失業者は2000万人を超えると推測されている。 地方政府は、大学を新設し、学生が集まれば、かれらの生活のために地域の経済が活性化すると目先の利益にとらわれ、就職問題など考えずに、次々と大学を作った。一方、かられらの就職先である国営・民営企業は次々とできるはずがない。大学さえ卒業すれば出世できるという学生の夢は見事に崩れ去った。大がかりな詐欺にあったと学生が考えても仕方がない。 新卒失業者は、毎年増加し、改善策を取らなければ(取りようがないが)、2000万人、3000万人と増え、たちまち億という人数になる。どんな政府でも、民間の雇用を何千万も増やす方法はない。だとすると、各地で、第三、第四の天安門事件が起こる可能性がある。胡錦濤が、もっとも恐れるのは、次々と勃発する天安門事件である。尖閣事件は、苦境に立つ学生に、反政府デモの口実を与えた。しかも、解決策はない。対応を誤ると、デモが暴動に発展する可能性が十分ある。デモを鎮静化させるために、とりあえず、胡錦濤は、対日強硬策を取らざるを得ない。 中国共産党がもっと恐れるのは、独裁体制の崩壊である。独裁体制を崩す要素―格差、民主化、チベットやウイグル地区問題、失業、環境破壊、洪水と水飢饉、北京の砂漠化などーは数えればきりがない。しかし、共産党は独裁体制を守るために、国内はもちろん、国外に対して妥協することなく、強い態度で臨む。それには、人民解放軍を唯一つの頼りにせざるを得ない。これが独裁体制の普遍的な特徴である。 しかし、今回の日本に対する強圧的な態度は、中国を国際的に孤立化させた。レアアースの禁輸は世界中から反発を招いた。ベトナムもインドもレアアースの生産に、日本と協力する。市場原理に従って、中国の生産は消滅する。しかし、独裁者は市場原理を理解できない。 参照)長谷川慶太郎ニューズレター、2010.10.29 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-10-30 12:21 | 社会
2010年 10月 29日
日本国内の世論は日本のマスメディアに強く影響され、広い国際的視野に欠ける。それは日本のマスメディアが縦書きであり、海外の人たちは読まない。だから海外の厳しい批判を受けうことがないために、どうしても一人よりがちになってしまい、国際的に通用しない意見を抱くことになる。 ロンドンで発行されている『The Economist』は、1843年から現在まで160年間も続き、その間の歴史の変転をつぶさに観てきた。正確なデータと分析能力はEUやアメリカの経済界に強い影響力を与え、時にはオピニオン・リーダーの役割を果たした。 同週刊誌は、日本の中国船長の逮捕に対して中国が示した過剰反応は、中国のアジア外交を数年分も後退させたと指摘する。要するに、中国は、大声で騒ぎたてる外交政策を採用したように見える。最も大きな叫びが向けられたのは日本だった。尖閣諸島で中国の漁船が日本の海上保安庁の巡視船に衝突するという事件が起き、日本は中国漁船の船長を2週間拘留した。 中国の政府高官が、船長が釈放されなければ、何らかの措置が講じられることになると緊急の警告を発すると、奇妙なことが起き始めた。異常に厳しい通関検査が行われ、日中貿易は滞った。レアアースの輸出は、公式の発表がないまま差し止められた。日本のゼネコンの社員4人が軍事施設を撮影したという不可思議な容疑で拘束された。 日本はこれに恐れをなした。尖閣諸島を管轄する地方検察庁が、中国船長を釈放した。奇妙なことに、地方検察庁は日中関係の重要性に言及した。まるで、外務省が末端の司法機関に外交上の権限を預けたようだった。しかし、中国は態度を和らげようとせず、日本謝罪と賠償を要求した。 10月4日には、ブリュッセルでアジア欧州会合(ASEM)が開かれ、それから数週間のうちにG20首脳会合、東アジアサミット、アジア太平洋経済協力会議(APEC)が開かれる。そうした会議で、中国と日本の首脳が握手するかどうかという憶測ばかりが注目されるとしたら、情けないことになってしまう。外交上の力比べは、「1対0」で日本の完敗であった。 菅政権は、統率されておらず、混乱しており、弱体だという印象を残した。日本の取った措置は、司法権の独立を有名無実にしてしまい、中国の方が法的手続きを尊重したように見える結果を招いた。一方の中国は、日本の管理下にあるにもかかわらず、尖閣諸島は中国の領土であるという見解を強硬に示し、自らの主張を通すための経済力、外交力があるということを見せつける形となった。 同じメッセージは、ほかの地域でも見て取れる。中国は南シナ海のほぼ全域についても、理由の説明もなく曖昧に、しかし徹底的に領有権を主張しており、これを警戒する東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国は、米国に対してこの問題に関与するよう働きかけた。 インドも注意深く状況を見守っている。マンモハン・シン首相は、中国の海洋への野心に対する懸念を口にした。シン政権は、中国がインドのある軍幹部へのビザ発給を拒否するという挑発的な行動を取ったことに対して懸念を示してきた。拒否の理由は、この軍幹部が長年にわたり中国との紛争の続くカシミール地方で任務に就いていたことだと見られる。 中国はこの数年間、棚上げ状態にある中印間の大きな領土問題(インドがラダック、アルナチャルプラデシュ州と考える地域を巡る紛争)を再び蒸し返そうと躍起になっているように見える。 力強い新興国である中国が、主権について過敏になっているのは予測の範囲内だ。だが、日本に「勝利」したことが本当に中国にとってプラスになったのかどうかについては、議論の余地があるに違いない。前原外相が指摘するように、尖閣諸島に関する中国の振る舞いは「相当数の国に対して、中国の本質の一端を」瞬時うかがわせた。それを目撃した国が、今回見たものをあまり快く思わなかったと考えるのは妥当だ。 中国の、ほとんど好戦的と言ってもよいほど激しい反応がもたらした影響をいくつか挙げてみよう。まず米国には、尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象となることを再確認させた。日本には、レアアースなどの天然資源の採掘地を中国以外に求めることを真剣に考えさせ始めた。東南アジア諸国には、米国との距離を縮めさせた。中国の高官なら「拾った石を自分の足の上に落とした」とでも言いそうな状況である。今回の一件を、中国における軍部の影響力の拡大、2012年に開かれる次回の中国共産党全国代表大会での次世代指導者層への権力委譲を控えた権力闘争、あるいは共産党に正当性を与える新しい材料となる何か(例えば愛国心)の追求、といった見方もある。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-10-29 12:36 | 社会
2010年 10月 27日
北京で4日間の中央委員会総会の最中に、各地で反日デモが起こり、今もデモは各地に拡大しつつある。ついにチベット自治区に飛び火し、ここでは民族の平等が主張された。いま、中国共産党指導部の内部は、熾烈な権力闘争が行われている。胡錦濤、温家宝路線に反対する党内保守派が猛烈な攻撃を繰り返している。この中央委員会では保守派が勝利した。習近平を党中央軍事委員会の副主席に任命することができた。習近平氏は次の党総書記、国家主席とも言われている。 習近平は前の前の国家主席江沢民の一の子分である。江沢民は天安門事件以後、反日教育を徹底して推し進めた。一方、胡錦濤・温家宝を尖閣列島問題で、日本にこぶしを振り上げ、日本との閣僚級以上の交流を禁止した。このままでは、胡錦濤は、11月の横浜で開かれるAPECに出席できない。日本との関係を修復する必要がある。現政権は苦しい立場に落ち込んだ。胡錦濤に反対する保守派の江沢民と直系の連中はこの絶好の機会をつかみ、新日政策を修正しろと迫ったに違いない。その圧力を利用して、習近平を軍事委員会副主席の地位に押し込んだ。つまり、内陸部の学生の反日にデモは、強烈な反日主義者江沢民と胡錦濤の路線闘争の結果である。 反日デモが内陸部の都市に多いのは、内陸部の警察が弱いからである。今年6月の内陸部の大学新卒者600万人のうち250万人の職がなく、不満が充満している。今年、6月には、6百何十万人が卒業するから、800万人以上が職を求める。ほとんどの民営企業は大学新卒は採用しない。即戦力になる経験者を採る。今年はこの全部が就職できない可能性がある。来年、また新卒者が誕生するので、大卒の失業者は2000万人を超えると言われている。地方行政府は争って大学を作った。地方に学生が集まれば地域社会が活性化するという目先の利益に飛びついた。しかも彼らは借金して大学を卒業した。デモで騒ぎを起こしたくなる気分になる。反日デモは、反政府デモである。 党政府の幹部は、特権を絶対に放したくなる。それを次世代に継承する仕組みが太子党である。党の中央委員クラス以上の子弟は太子党を利用して党の要職を渡りあるく。習近平はその代表的な人物である。父親は、元副首相、習は太子党の仲間から支持されているエリートである。胡錦濤はまるっきり違う。彼は、共産党青年団員からたたき上げた人物である。 江沢民派の習近平が党を握ることによって、内政も外政も大きく変わる。1党独裁を守るために国内の民主化を徹底して抑圧し、支配を厳しくする。対外的には、領土や主権の主張をより強固に押し出す。つまり、軍事力によって内部を支配し、外交では周辺国や地域に圧力かけ、支配海域の拡大を実行する。鳩山のいう「友愛」などまったく通じない。そして、われわれは、東アジアは冷戦状態にあるという認識をつよくし、それへの対応が欠かせない。 一党独裁と市場経済はまったく矛盾し、成功するはずがない。経済は至る所で破たんしかかっている。中国の高速鉄道の計画に4重4横と呼ばれるものがある。中国を縦に横断する4本の高速鉄道、横に横断する4本の高速鉄道である。計画はまことに雄大である。最近武漢―広州間の1100キロと、もう1本は上海―南京間の350キロが完成した。独自の技術で作ったと自慢するが、日本の技術を盗んだものである。どちらも、客はなく、がらがら、運賃は普通の列車の4倍、急ぎのビジネスマンは航空機を利用する。建設費は、国の出費が1/3、地方が2/3である。経営的には大失敗、利益どころか赤字の始末に追い回される。膨大な不良債権が発生し、償却する見通しはまったくない。 高速大量輸送は、よほどの需要がなければな成り立たない。「国の威信をかけて国産の新幹線を走らせる」だけで経済は動くものではない。それを独裁者は理解できない。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-10-27 21:09
2010年 10月 21日
東アジアでは冷戦が継続している。20年以前にヨーロッパでは冷戦は終わった。その結果ソ連共産党の独裁政権は崩壊し、同時に共産党の軍隊である赤軍も崩壊した。ソ連の政治体制の崩壊が、戦争に敗北した何よりの証拠であった。つまり、20世紀の重要な教訓の一つは大規模な戦争の勝敗が決まった場合、敗戦国の政治体制は必ず崩壊するということである。ヨーロッパでは、ソ連の崩壊によって、冷戦は終結し、核軍縮の道を選び始めた。東アジアには、共産党の独裁政権が支配する中華人民共和国、ベトナム人民共和国、朝鮮人民民主主義共和国の3国が存在し、西側陣営と対立している。共産党の独裁国家と西側との対立は必ず、冷戦に発展する。このために東アジアの軍事情勢は冷戦下にあると断言してよい。この事実をしっかりと認識しておかないと、中国の軍事力の強化、第1列島線から第2列島線への海軍力の膨張、尖閣諸島問題、西沙諸島や南沙諸島の実効支配、東シナ海と南シナ海の軍事力支配と資源の支配の本質を正確に理解することができない。言い換えれば、日本の安全保障はどうあるべきかを正確に認識できず、絶えず判断が揺れ、中国に対して毅然とした態度がとれなくなり、ひいては東アジアの安全保障を維持できなくなる。 ヨーロッパにおける冷戦は長距離・中距離ミサイルと核弾頭を軸として戦われた。その基本戦略は冷戦を熱戦に転化させないことにあった。このために、抑止戦略を基本戦略として、核弾頭とミサイルの強化を図り、ドイツには中距離核弾頭ミサイルを配備した。このような戦略を取ったのは、西側陣営は人口においても、経済力においても、勝っているので、冷戦から熱い戦争への転化を防ぎ、時間をかければ、ソ連の政治・軍事体制は、必ず崩壊すると確信していたからである。 この基本戦略は、現在続いている東アジアの冷戦にも当てはまる。北朝鮮が韓国に対して軍事的に侵攻しても、それが本格的な軍事衝突に発展させない態勢を取っている。万一、東側が本格的な熱い戦争を始めた場合、即座に戦力を集中して、短期間にせん滅する態勢を整えておく。そのためには、米国議会の承認なくして、即座に行動を開始できる海兵隊をアジアの戦略拠点に配備しておく。それが「抑止力」なのである。(陸海空3軍の出撃は米議会の承認が必要) 戦後、日本人は軍事知識の白痴状態に陥ってしまった。その原因の一つに、アメリカの日本に対する戦後政策がある。戦後、アメリカは、日本をアジアと切り離し、米ソの冷戦にも関与させず、原料資源の供給先、製品の輸出先を西側に求めさせ、自ら経済力と工業力の強化に専心させた。しかし、アジアと無関係に経済活動を展開できたのは、日本にとって幸いであった。その結果、日本の経済成長は極めて目覚ましく、他のアジア諸国との経済格差は著しく大きくなった。 戦前の軍国主義は、完全な秘密主義をとり、軍事関しては、何事も国民に知らせめなかった。それに加えて軍部の政治への介入、戦略なき戦争が、大戦中の軍隊に対する戦後の国民の強い反発を生んだ。米国は敗戦後の日本軍国主義排除のために昭和憲法を導入した。これは日本国民の圧倒的支持をもたらせ、平和ボケに拍車をかけた。 同じ敗戦国のドイツでは、第ニ次大戦が終わって、40年を経過して初めて、本格的な第ニ大戦の歴史研究が復活したという。ドイツは、戦後ただちに再軍備が開始され、東西両陣営とも、ドイツのもつ軍事的潜在力を利用すべく努力した。また再軍備に当たって、第ニ次大戦の軍事的な成果に高い評価を与え、ドイツの軍事的伝統を継承する路線が取られた。それでも、第ニ次大戦でこうむった被害があまりにも深刻で、ドイツの学者たちが冷静に歴史的事実を収集し、分析する知的環境になかった。まして日本では、戦前の軍部指導者の知的水準があまりにも低水準で、民間の知識人との格差が大きすぎたので、軍部に対する反発を強めた。 このような要因が、日本人の軍事無知、軍事アレルギーを生み出したが、東アジアの秩序を維持するには、どうしても軍事知識が必要である。 参考文献)長谷川慶太郎、『軍事・防衛は大問題』東洋経済新報社2010.8 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-10-21 16:46 | 軍事
2010年 10月 18日
中国が変化したのは、日清戦争以後である。国家は強大な中央政府がなければ維持できないと、異民族を支配するために、漢民族の暴力的な民族運動が盛り上がった。満州族の清朝が打倒され、国共内戦の結果、中国共産党が政権を握った。独裁者毛沢東は強大な単一共和国の建設しか頭になかった.(当時の幹部の中には、連邦制を主張した人もいた。)ソ連は、その組織が労農兵のソビエトという思想から、「ソビエト連邦」という連邦国家を設立したが、毛沢東はそのような連邦制という民族政策は一切認めなかった。最初から、共産党の一党支配で、たとえ異民族がいても、それを無視し、漢民族の独裁国家にしてしまった。それに拍車をかけたのが毛沢東の個人崇拝である。毛沢東皇帝そのもので、独善的で民主主義のかけらもなかった。 鄧小平は市場経済を持ち込み、政治と経済を分離するというが、一党支配の共産党独裁には絶対に触れさせない。独裁の政治体制を頑固に守った。資本主義経済が独裁政権を崩壊させるとなると、いつでも市場経済を中止する。そういうご都合主義が本質だが、絶対に口にしない。口にすれば、誰も投資しない。独裁的権力、覇権主義の鎧がのぞいたのが、尖閣事件であり、ノーベル平和賞事件である。獄中の運動家に平和賞を授与しただけで、ノールウェイとの外交を断絶するという中国はどのような国家だろうか。政経分離どころか、すべてに国家が最優先、党の独裁が最優先の国家なのである。 経済が好調だから、共産党の支配が成り立つ。だから共産党は、どうしても、経済の好調を維持しなくてはならない。そのためには、海外市場で中国製品を買ってもらわなくてはならならず、日米など海外から投資をしてもらわなければならない。そうしないと中国経済の歯車はたちまち止まってしまう。決して、日本は中国の恩恵を受けているだけではないのである。日本の技術と資本がなければ、中国経済は成り立たない。 賃金が20%から30%も上昇した工場が多いが、これは山猫ストの結果で、国の政策によるものではない。自然発生的に広がった山猫ストの蔓延は共産党政府に深刻な危機感を与えた。毎年、20%も、30%も賃金が上昇したら、労賃の安さを武器にした中国経済は、過去のものになってしまう。 中国共産党は支配階級の政党で、労働者農民の味方ではない。改革開放政策の最大の矛盾は、共産党員のブルジョワ化を進行させたことである。日本に、買い物に来る中国人に、共産党員の家族が多いと考えられる。中国の留学生は、確実に共産党員であり、共産党員でなければ留学は許されない。中国の富裕層の最大部分は、党政府の幹部とその親族である。しかも彼らは社会のあらゆる組織を独占的に支配しているから、ほとんどチェック機能が働かない、権限の乱用や汚職が蔓延しても、防ぎようがない。中国の経済成長がどこまで続くか。自分たちの利権がいつまで確保できるか。その方がはるかに切実である。 いま彼らに流行っているのは、香港での不動産を買うことである。もう上海の不動産は終わった。香港なら、人民元で不動産を買い、香港ドルで売ることができる。香港ドルは、すぐに米ドルに交換できるので、資産を海外に移転するのに好都合である。 中国共産党も、この経済が破たんして危機を迎えるときに、どういう事態が起こるか。本能的に危機感を抱いている。これだけ大きな市場経済になれば、好不況の変動も、恐慌の勃発も、政府はコントロールできない。そのとき、民衆がどう動くか。想像さえ困難である。新たな天安門事件にどう対処するか。危機の足音が聞こえ始めている。 ただひとつ確かなことは、共産党にとって、頼りになるのは人民解放軍だけであるということである。中国の軍隊は国軍ではない。共産党の軍隊である。しかも各級の部隊には、党が派遣した軍事委員が支配している。その人事は党書記の権限で国防相ではない。党中央軍事委員会の主席は、党の総書記、胡錦濤が兼ねている。習近平は、軍事委員会副主席に就任し、胡錦濤の後継者になることが確実になった。つまり、軍優先の国家であり、毛沢東の核心思想である「政権は銃口から生まれる」は確実に定着し、国内と国外に対する行動様式の基本となっている。甘く、友好的な国家ではない。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-10-18 21:01 | 社会
2010年 10月 17日
中国は尖閣諸島侵犯事件で世界から反発を受け、獄中の反体制運動家へのノーベル平和賞受賞に対する中国政府の態度で更に追い打ちをかけられた。今や、中国は、世界の逆風の真っただ中にあると言ってよい。中国のこのような頑固な態度は、現在の国際社会には絶対に受け入れられない。領土問題を主張できたのは、20世紀までであった。前世紀において、民族と領土の紛争で、2度も世界大戦を引き起こし、今も何十ヵ所、何百箇所も紛争を抱え込んだままだ。それをすべて封印することで、大陸に平和をもたらせ、欧州統合を成し遂げた。中国はあれほど、広大な国土を抱え、どうして、日本の小さな島の領土権を主張するのか。正気の沙汰ではない。そういわれると、温家宝は反論できない。中国の完全な敗北であった。だから、21世紀になっても、まだ領土問題にこだわる中国は、国際社会ではまったく受け入れられないのである。世界がもう完全に変わってしまったのだが、中国はそれが理解できない。時代遅れの哀れな国である。だから、日本は強く主張しても構わないのである。中国の領土・資源への野望は、世界の非難のまとなのである。日本は中国と妥協して何の利益もない。 レアメタルは強い磁性を持つために有用な材料である。中国のレアメタルの輸出制限は、自由貿易の立場から世界から非難された。あわてたのは、日本のマスコミである。すでに、パナソニックやシャープは代替品の開発を始めた。レアメタルの代替品が窒化鉄と聞いて、思わずはっとなった。現役時代に、鉄が単一原子層に並んだ場合の磁性の理論的計算があり、強い磁性を示すことが示された。もちろん、鉄の単一原子層は現実には存在しない仮想の物質である。しかし、窒素原子で鉄の単一層をサンドイッチ状に挟むことによって、鉄の単一原子層に近い物質ができる。この物質の磁性は異常に強い。だから当然、レアメタルの代替品として使える可能性がある。 中国の領土的野望はの原因は、あくまでも強大で広大な単一国家に固執した毛沢東以来の中国共産党のイデオロギーにある。中国のような広大な土地を単一国家に統一するのは、不可能なのである。第一に言葉が違う。風俗習慣も違う。歴史が違う。上海人では北京で育った人の言葉を理解できず、上海人は北京人の話し言葉は理解できない。ベトナム戦争直後、膨大な数の中国人民解放軍が突如、国境を越えてベトナムに流れ込んだが、人民解放軍はベトナム戦争後の貧弱なベトナム軍に完敗し、世界の軍事専門家を驚かせた。完敗の1つの理由に、人民解放軍の間で言葉が通じなかったことが挙げられている。 漢民族の地域は中国全体の1/3程度であったが、現在では2/3の地域まで武力で直轄支配している。支配された民族は、貧困と抑圧を押しつけられている。歴代の中国の王朝は連邦制とは違うが、貢物や税金を差し出せば、言葉も、風俗習慣も元のままで、平和に暮らせた。だから多くの民族が中国の皇帝に服従した。琉球は薩摩藩の支配下にあったが、中国にも服属していた。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-10-17 16:48 | 社会
2010年 10月 16日
抗がん剤の副作用は厳しく体力をひどく消耗する。私は抗がん剤の点滴のために、免疫力が低下して、細菌性の肺炎に罹った。高熱が続いたために、ベッドに縛り付けられ、ようやく回復しつつある。このため、ブログの原稿が書けなかった。しかし、もう、少しずつ原稿を書く準備をしている。 がんの問題を長く追及した柳田邦男は、彼の著書『新・がん50人の勇気』の中で、小説家のようなモノ書きは、がんによる死に直面して、書くことによって生命を維持していると述べている。山本七平、井上靖、手塚治、米原万里らは、自分の生命が絶たれるまで、書くことに強くこだわった。山口瞳氏が、小説『江分利満氏の優雅な生活』で直木賞を受けてからスタートした『週刊新潮』のコラム「男性自身」は1995年8月30日に肺がんで急逝するまで、足かけ32年、1回も休むことなく1614回も書き続けられた。 しかし、手術を受けてから死ぬまで、わずか4ヵ月しか持ち時間がなかった。手術を受けたとき、メスを入れると危険な状態で、切除不能であることが分かった。がん細胞の種類は悪性度の高い大細胞がんであった。しかし山口氏は動揺しなかった。5月31日、いったん退院しても、「男性自身」は休載することなく、書き続けられた。7月21日には下半身が麻痺して動けなくなったために、再入院。背骨に転移していた。 身体が動かなくなると、ベッドに画板を立て、その上で原稿用紙を置いて書き続けた。その頃書いた最後の 「男性自身」には、「どうやって死んでいったらよいのだろうか。そればかり考えている。唸って、唸って、カクンと別の世界にいてゆくのだろうか」とある。苦しい病状を見かねたご子息が「ホスピ」に行くことを薦めた。氏は「痛みがとれて原稿さえ書ければ、俺はどこへでも行くよ」とホスピに行き、鎮痛剤の注射を打つと、もう2度と意識は戻らなかった。 評論家立花隆の離婚した前の奥さんが肺がんと診断されたときは、手遅れで、脳に転移し、転移巣は10個以上もあった。彼女は突然襲った過酷な運命に怒り狂った。あらゆる人に憤懣をぶっつけた。しかし病状がさらに悪化し、自分の死が避けられないことを知ると、心が次第に澄んでいき、わずか半年の間に、2冊の本を書き、最後はあらゆる人に感謝する心境になって死んでいった。 私は実験科学者、実験によって新しい分野に挑戦し、新しい成果を得て行く。だから、実験が主体で書くことは、研究の成果をまとめる手段に過ぎない。しかし、研究の成功を書かなければ、成果と認められない。言い換えれば、成果を書いて発表しなければ、科学者として認められない。その意味で書くことに執着を持っている。それが、このブログに書くことの出発点になっている。がんが進行すれば、書くペースは確実に落ちる。しかし。書けるときまで、書き続けたいと願っている。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-10-16 15:20 | 社会
2010年 09月 20日
9月6日のプログにエストニアの音楽について書いた。CDを下さったのがヴァーレステさんである。ヴァーレステさんからメールを頂いたので、ブログに掲載します。 同氏は優秀な物理学者であったが、共産党への入党を拒んだために、教授になれなかった。共産党の独裁国家の教授資格は共産党員であることが必須の条件である。私は研究室の中国留学生から、「先生は秘密自民党員でしょう」と聞かれてびっくりした。中国共産党の独裁国家の大学の教授資格も共産党員が条件である。 旧ソ連時代エストニアには、モスクワ支配の原子炉工場、半導体工場、数理統計の研究所があり、知的活動は活発であった。それ崩壊とともに、モスクワからの資金が途絶え、研究開発の活動が不可能になった。 ヴァーレステさんは外務省に入り、活動を始めて、職員はすべて非共産党員で構成されたために、その若さに驚いた。ヴァーレスさんは、初代の駐日大使として、1年間来日され、エストニアー日本の関係強化に努力された。お嬢さんは上智大学に留学し、国際比較文化の勉強をされた。 物理学者、外交官の職を離れて、いろんな職に挑戦された。そのいくつかをウエブサイトとしているので、ご参考にして下さい。
Dear Prof. Kawai, Thank you very much for your message. It is good to hear that your lung surgery was successful. Of course, as you are undergoing oncological treatment now the side effects are inevitable. Let us hope that this treatment will be successful too. It is very good that you are writing to technology.exblog.jp. I tried to read your entries, but it is not easy. I must try harder. This year, the summer in Estonia was hot too. For over a month, the air temperature was over 30 Celsius and there was no rain. Now the summer is over here, it is raining and temperature is 13-14 Celsius. People go to forests to collect mushrooms. We have edible mushrooms at our summer house too and today, my wife found quite a lot of them so that it was possible to cook a meal of them. Yes, my family is OK. As you remember, we have 3 sons and a daughter and the daughter is the youngest. She married a Finnish guy 3 years ago and now they have a lovely 3-month-old daughter. Our eldest son has 1 daughter and 2 sons and our second son has 1 son and 1 daughter. Our youngest son has no children yet, but he has found a nice girlfriend now and we hope that they will marry soon. My wife retired a couple of years ago and I am still acting as the webmaster for several websites. My biggest work is www.diapol.com, which is the website of Diapol Granite Ltd that belongs to my sons. Other sites I have created are www.prosperainfo.net, www.eter.ee, www.hot.ee/estjap, www.vallaste.ee and some others. Wishing you fast recovery, with best regards to your wife, Heikki Vallaste
河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-09-20 23:30 | 社会
2010年 09月 14日
日本は製造業で生きるしかない。その判断指標は特許貿易の構成収支である。2007年の特許貿易の国際収支は8000億円の黒字で、同年の商品輸出の国際出超額は8兆円であった。商品貿易収支の黒字額と比較すると、特許貿易の収支8000億円は巨額である。しかも、技術先進国アメリカを含めてすべての国に対して黒字である。だから世界は日本の技術に注目し、世界の経営者は日本の技術を利用しなければならないという考えが定着しつつある。 日本の技術を一段と世界に際立たせたのが、環境保全技術である。日本は、世界でもっとも巧みに環境保全と経済成長を両立させた。日本のGDPは世界の16%、石炭、石油、天然ガス、原子力の一次エネルギーの消費量は世界の5%に過ぎない。世界のGDPを現在の値に維持して、日本のエコ技術を採用すれば、世界の一次エネルギーの消費流を1/3に削減できる。 日本おいて、二酸化炭素の排出量の40%は電力と鉄鋼である。日本の製鉄所は世界最高の 品質の鉄鋼を世界最小のエネルギーで生産している。1トンの鉄鋼生産に必要なエネルギーを石炭に換算すると、200年前の産業革命開始当初は石炭30トン、鉄鋼一貫生産開始の20世紀初頭では、3トンに減少した。現在、日本は1トンの鉄鋼を生産するのに、石炭換算0.5トン、米国など先進諸国は1.0トン、中国は1.5トンである。日本は排熱を徹底的に回収して、電気変え、その電気で工場を動かし、余った電気は電力は電力会社に販売している。要するに、日本の製鉄所はエネルギー消費産業ではなく、発電所に変貌したのである。 ここにきて、鉄鋼業界に大きい変革波が起る。それは、銑鋼一貫生産から電炉を用いた鉄鋼の生産である。銑鋼一貫生産は、19世紀後半から急速に発展した生産方式である。鉄の酸化物を主成分とする鉄鉱石を輸入る。一方、輸入した石炭を蒸し焼きにしてコークスを作る。溶鉱炉に、鉄鉱石とコークスを入れ、加熱して、鉄鉱石を還元して、銑鉄を作る。溶融状態の銑鉄を転炉に注ぎ込み、転炉の底から酸素を吹き込み、炭素分の少ない強靭な鉄鋼を作る。転炉中の溶融鉄鋼を圧延機に流し、その圧力の微小な変化と温度の調整でさまざまな性質の鋼板を作る。圧力と温度だけで、何万トンの鋼板をコントロールするのは、まさに神業である。 鉄鋼一貫生産から電炉生産への転換は省エネ技術の画期的前進である。電炉の消費するエネルギーは石炭換算で、0.1トン、従来法の1/5にに過ぎないからである。だから、現在の鉄鋼一貫生産ら転炉の転換は、二酸化炭素の排出量を大幅に減少させる、環境保全技術と同時に低コスト鋼材を生産する。 電 電炉の最大大手東京製鉄は、トヨタ田原工場に隣接して電炉工場を建設した。トヨタのくず鉄を原料には鋼を生産する。トヨタのくず鉄は純度が高いので、高品質の鋼を生産できる。この鋼材は自動車、電気工業、機械工場に供給する。原料をくず鉄、高品質の鉄鋼の安定供給と うサイクルが完成する。 日本には、戦後、急速な経済成長、高層ビル、各種機械や施設が無数に存在する。膨大な量の鋼材が国内に25―28億トン蓄積されていると推定されている。鋼材は時間とともにスクラップになる。高層ビルは何千トンのスクラップ、自動車は20年でスクラップ。そのスクラップを回収する。回収したスクラップは年間1億3000万トンにもなる。こうなると、日本は石炭、鉄鉱石を輸入する必要がない。国内のスクラップで、国内に必要な鋼材を供給できる。 米国やヨーロッパン諸国の銑鋼一貫方式はその役割を終えつつある。転炉の技術開発に全力を挙げて取り組むことによって、過去の幻想に過ぎなかった、ハイテク、ハイクオリティ、ハイプライスからデフレ時代に対応したハイテク、ハイクオリティ、ロウプライス の鉄鋼材料を供給でき、これは産業の大きな構造変化につながる。
不動産業界からの安いビル建設への強い圧力で、鉄骨なしの、鉄筋コンクリートだけの高層ビル開発が進んでいる。 総武線の市川駅近く、50階マンション、鉄骨なし、鉄筋コンクリートだけで建設する。東京山手通り、50階建のマンション、コンクリートブロックだけのビルが建ち始めた。鉄筋コンクリートだけのビルは、工事の短縮、建築コストを削減する。この建築工法は日本のみの技術革新である。この結果、 建築に使用する鋼材が減少する。10階のビル、6000-7000トンの鉄骨使用、これがゼロになる。鉄骨を組み立てる業界は斜陽族で、建築用のH鋼は1年で半値に下落した。 技術革新は不動業界から起こった。都心部の中心部のオフィスビルの空き室率8%、この率は大きい。老朽化ビルの建て替えコスト削減を求める、建築コストの削減ができなければ受注できない。建築会社間でも激しい競争のためにも、鉄骨を必要としない技術革新が必要であった。この技術はいずれ世界に広がる。もちろん数百、数千の特許に守られているが、世界への拡散は早い。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-09-14 12:03 | 技術
2010年 09月 13日
現役時代には、年2回アメリカの材料学会(MRS)に出席していた。春はサンフランシスコ、秋はボストンのホテルで開催され、日本のみならず、ヨーロッパからの参加者も多い。会場はAからXまで分かれ、あらゆる分野の材料の基礎が取り上げられる。半導体、超伝導体、光学材料、液晶材料、金属材料、有機材料、生命材料、遺伝子などである。AからXまでの会場で取り上げられる内容は、1年前にならないと決まらない、それは、企業がテーマに賛意を表明し、同時に会場や学会の全体の運営費を負担して初めて決められる。だから、新しい重要なテーマはどんどん取り上げられ、陳腐なテーマは消えて行く。日本の学会にも、各専門別の分科会があり、最先端のテーマを取り上げる新しい分科会の新設は難しく、一方古いテーマの分科会を取りやめるのも難しい。これに比べると、アメリカの柔軟性には驚かされる。会場に現れる科学者の服装もジーパンでリラックスしている。ネクタイを締めるのは日本人くらいである。 私は、ほぼ20年間、MRSに出席し、多くを学び、また強い刺激を受けた。あの頃は、スタンフォード大学やボストンのMITはあこがれの的であった。しかし、デフレ時代には大学教育に対する考え方も変わり、それが米国でもはっきりと表れている。 まず米国は日本以上の学歴社会である。高校を中退した者は社会の底辺からなかなか這いあがれない。この人たちが、中南米などのからの密入国者たちと低賃金で競争している。大学に進まず、高卒で社会に出ると、現場の肉体労働者になる。大学を卒業すると、一応は資格と才能の持ち主と認められ、エリートコースを歩む者と、歩まないけれども中流になれる者に分かれる。名門大の卒業者ならエリートコースへの道が開けていた。 ハーバード、イエール、ペンシルベニア、コロンビア、プリンストン、ブラウン、ダートマス、コーネルという8つの大学で構成されるアイビーリーグの卒業生はそのままエリートコースを歩むと見なされていた。今は、エリートコースを歩めないものが増えている。これは、企業が人材を厳選するようになり、特に給料の高いものを中心に、リストラをするようになったからである。もはや、アイビーリーグの卒業者でも高級エリートコースを歩めるという保証はない。 アイビーリーグの名門大学の学費は高い。学生は高額の学資ローンを組んで名門大学に通う。卒業後エリートコースに乗れば、高給をもらえるのでローンを返済できる。しかし名門大学を出てもエリートコースに乗れなければ、卒業後借金地獄に陥る。米国では、大学卒業後に学資ローンを返済できない者が続出している。だから、借金までして大学にいく必要はないという考え方が広がっている。米国でも、自分の知的レベルだけでなく、自分の家計も考慮して大学に進学すべきかどうかを検討する時代になった。この傾向は、米国でカードローン生活が崩壊し、まず節約をしてから消費するという、消費構造の激変と期を一にしている。やはり、デフレの影響なのである。 学生の就職が厳しくなったのは米国だけでなく、世界的傾向である。中国では、毎年600万人の大卒者がいるが、その3割が就職できない。賃金が割高で、大卒者が希望するオフィイスワークの仕事が増えない。日本でも、文部科学省と構成労働省の調査によれば、今春卒業の大学生の就職内定率は、2月1日の時点で、前年同期を6.3ポイント下回る80.0%となった。これは、1996年の調査開始以来、最悪で、就職氷河期の2000年の81.66%より下回る。日本では、大学を卒業したにかかわらず、非正規労働者になるという若者たちが増えている。 賃金が下落するとともに、大学卒が就職の有利の手段にならない現実は、デフレの時代だからである。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-09-13 13:50 | 社会
2010年 09月 12日
人間は、一定量の水を飲まなければ、生きられないし、工業生産や農業生産にとっても水は不可欠である。多くの点で人間の生活と堅く結びついている。この主な原因は、水の分子の構造に多くを依存している。酸素の電子雲に小さい水原子がもぐりこみ、水素原子―酸素原子―水素原子の角度は、<HOHは105~116°である。水素分子は中性で、酸素原子とマイナスに帯電し、水素原子はプラスに帯電するために。電荷の偏りがあるが、分子全体としては、電気的に中性である。電荷の偏りが様々な物質を溶かし、プラスに帯電した水素原子と隣の水分子の負に帯電した酸素原子の間に、水素結合ができ、この水素結合が氷の結晶から生体内の結合水を作る。マクロ的にみると、地球は水惑星と呼ばれるほど水に満たされた天体で、海水が地球表面の70.8%を覆い、地球上の97.5%を占めている。陸水のうち湖沼水や河川水などの地表水は陸地面積の3%に過ぎない。 新興国の経済成長、人口の増加や都市化を反映して、水の需要はますます拡大する。大都市に集まった人々に生活用水を供給するための上水道、その生活から生じた生活排水を処理するための下水道、これを大量に建設し、運営しなければならない。新興国や発展途上国は近代的な水道がないため、必死になって整備に取り組んでいる。インドには、デリーやコルカタ、ムンバイなどの大都市には水道があるが、それでも完全に滅菌された水ではない。もっと深刻なのがアフリカである。南アフリカを除くと、アフリカには水道がない。 2025年の世界の水使用量は2000年比で3割増えるという予測や新興国の人口増と工業化で上下水道整備、海水の淡水化、排水の再利用など世界の水ビジネスの市場規模は2005年比で8割増の約110兆円に達すると予測されている。 水関連の事業の中で、需要の大半を占めるのが、上下水道の施設の建設、維持、管理である。この分野では、フランスのヴェオリアやGDFスエズなどヨーロッパの水メジャーが強く、インフラ整備から運営・管理まで一括して請け負う体制を整えている。日本の上下水道インフラは建設、運営を含めて自治体が担ってきたため、日本企業は出遅れている。 一方、それ以外の水処理膜やポンプなどの水処理部品では日本企業は高い技術を持っていおり、世界的に強みを発揮できる分野である。その一つに浸透圧より大きな圧力で汚水を押し出すことによって異物を取り除くRO膜(逆浸透膜)がる。日本はRO膜で世界最高の技術を持っており、日本の製品を使用しなくては、水の再生はあり得ない。 浸透膜に仕切られた濃度の異なる水溶液は、同一濃度になろうとする傾向を持つために、濃度の低い液体から濃度の高い液体へと水分子が自然に移動する浸透という現象をもつ。これに対して、濃度の高い液体に圧力をかけると浸透膜を通して、水分子だけを透過する。この理由は、浸透膜の孔の大きさが0.00001ミクロンという超微細なために、水の分子だけを通し、不純物を通さないためである。分離された不純物は排水として器外に排出される。実際には、孔の大きさを変えることによって、除去する不純物の種類が変わり、ナトリウム、塩素、硫酸、フッ素、農薬などさまざまな不純物を除去できる。 シンガポールでは、パイプが2つ、蛇口が2つあるビルがある。片方が飲用水で浄水、他は下水から再生した再生水である。この再生水はシンガポールが必要とする水の約3割を占めている。水再生プラントは、生活に伴って発生する生活排水を再生して2次給水を行う。生活排水の中には汚物が入っている。この汚物を取り除いて、きれいになった水を再生水として利用する。RO膜を使用すれば、生活排水だけでなく海水の淡水化もできる。海水には塩分を含めてさまざまな物質を溶かしており、それを取り除けば真水になる。 RO膜の市場規模は世界で約600億円、水処理膜は日本が得意とするナノテクノロジー(超微細技術)の結晶である。東レ、日東電工、東洋紡がRO膜を生産しており、日本はで世界の6割のシェアを持っている。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-09-12 15:13 | 技術・経済
2010年 09月 10日
経済活動のエネルギーの主役は原子力発電である。それは、太陽光や風力のエネルギーは極めて希薄であり、自然条件によって絶えず変動し、それだけコストが嵩む。原発150万キロワットの電気を太陽電池で発電するには、東京の環状線の内側の面積が、風力発電では、その7倍の面積が必要である。しかも、建設コストは原子力発電所よりも高い。原子力発電所の敷地面積は、水力発電所や火力発電所の敷地面積よりも狭い。つまり太陽エネルギーは、「巨大な貧鉱」で、経済活動のエネルギー源には不向きである。 大国の財政危機を救うのにもっとも有効なのが軍縮である。その中心は核戦力である。世界の核の96%は米国とロシアと保有しているので、両国が核軍縮をしなければ、核廃絶は不可能である。昨年、9月24日、国連安全保障条約理事会が、「核拡散防止と核軍縮」についての首脳級会合を開き、オバマ大統領の提案による「核兵器なき世界を目指す決議」を全会一致で採択した。これは画期的な出来事であった。財政危機に苦しむロシアも喜んだ。安保理の満場一致で採択した核軍縮は戦争をなくすために極めて有効な手段である。平和を維持するという意味から、これも長期的にはデフレをさらに加速するであろう。 核軍縮は原子力発電所の建設につながる。核兵器を削減すると、核弾頭のウラニウムを再処理して原発で使うウラン燃料に変える。核兵器のウランから原発の燃料を作ると、燃料の価格が安くなるので、原発の建設が加速される。 日本の日立、東芝、三菱電機は原発の建設、管理、運営で、世界最高の技術を持っている。日本製鋼は、大型ローターシャフトや原子炉本体の入れ物である圧力容器など鍛造品の世界シェア8割を持っている。現在、2年分の850億円の受注残を抱えており、工場はフル稼働である。送電や配電にも新しい技術を導入いなければならず、この分野でも日本は世界日本誇れる技術を持っている。 海外の原発建設プロジェクトを受注する場合、重電メーカーのみでなく、電力に関する多くの企業の連携に加えて、原発は国家プロジェクトであるから、国の支援が不可欠になる。その立場から、昨年末のUAEのアブダビ首長国とベトナムの敗退は、日本にショックと大きい教訓を与えた。 UAEが韓国の原発を受注したのは、価格が2割安かったからである。しかし、韓国の受注原発の部品は日本が受け持つことになる。韓国には、原発を設計、製造、組み立て、運転する技術を持つメーカーはない。日本には、東芝、日立、三菱電機の3社がある。今回、受注したUAEの原発も東芝とその傘下のウエスチングハウスが技術協力をすることになっているが、下請けでは、利益は少ない。 これからは東電が中心になって行うべきである。東電は原子力発電の高い技術を持っている。2007年7月の新潟県中越地震での東電柏崎刈原子力発電所で火災が発生したが、放射線漏れも、発電施設の被害はまったくなかったために、世界の原発の専門家は東電の安全性の技術を非常に高く評価した。韓国電力と東電とを比べると、原発の数では韓国電力が多いが、発電能力については、東電が圧倒的に優れている。 ベトナムの原発計画は東南アジアで初めての建設プロジェクトである。2期に分けて2ヵ所に中型炉を4基建設する。発電能力は1基100万キロワットである。第1基工事に日本やロシアが争い、ロシアが受注した。ロシアが受注したのは、原発建設のみならず武器供与を提案したからである。ベトナムにとって中国は仮想敵国で、1979年には中越戦争が起こり、貧弱なベトナム軍が勝利した。現在は、南シナ海の領有権の交渉が難航している。ベトナムは中国の航空母艦建造に強い警戒心を持っている。日本は武器の代わりにODA(政府開発援助)による円借款による支援によって、受注の道が開ける。 東電のイニシアティブの下に原発を運営するハードとソフトをできるだけ安く提供すれば、UAEに限らずどの国の原発でも受注できる。そして東電のイニシアティブに加え、それをバックアップする日本政府のというシステムを早急に構築する必要がある。 河合七雄 参考文献)『メガ・グループの崩壊』、長谷川慶太郎、李白社、2010.4.
# by shichio_kawai | 2010-09-10 20:42 | 技術・経済
2010年 09月 06日
真珠のようなピアノの音の水滴が1滴落ちる、繊細で、静かなピアノの独奏がシリアスに響き、徐々にテンポを速め、管楽器のソロに引き継がれる。あくまでも孤独だ。ピアノのトリフルにフルート、クラリネットと弦楽器が答え、幻想的な雰囲気を醸し出す。静かな幽玄の世界だ。音楽はアタッカで第2楽章に魔法のように入っていく。この楽章はエストニアの古い旋律に似た純粋な音楽的なパターンが土台になってる。暗い響きが繰り返し、繰り返し、激しく奏でられる。主要な主題はしだいに長くなる反復のうちに進行し、絶えず成長しながら最後にクライマックスに至る。クライマックスはエストニア民族の悲劇を象徴している。このピアノ協奏曲はエストニアの友人からもらったレポ・スメラ作曲の2楽章からなるピアノ協奏曲である。 私はモスクワ大学に招聘されたとき、エストニアのタリン工科大学の物理学者と知り合った。彼は日本語で話しかけてきた。その後、独立前後に、しばしば、エストニアを訪れ、抑圧された人々がどのように立ち上がるかをつぶさに見てきた。最初にエストニアを訪問したとき、タリンの貧弱な国際空港から、12世紀、ハンザ同盟の東端の都市として栄えたタリンの城壁に向かったとき、ソ連の社会主義独裁政権が国民の生活を根底から破壊していることに、強い衝撃を受けた。 エストニア民族は、ポーランドに、ロシアに、そしてソ連邦に支配され、ドイツ・ヒットラーに占領され、再びスターリンに弾圧された。ソ連の支配下においては、政治家、教師、警察官などは、銃殺、あるいはシベリアに抑留された。人口の約2割を失った。1日で約1万人が貨物列車でシベリアに送られた。もちろん、立ったままであった。その多くの人たちは、再び故国エストニアの土地を踏むことはできなかった。最も惨劇が繰り広げられたのは、ナチス・ヒットラーに占領されたとき、ヒットラーに協力した人々が、北欧の軍隊に捕えられ、収監され、ついにソ連に送られたときであった。送られた多くのエストニア人は自らの命を絶った。 大国に翻弄された抑圧された人々に、精神の強靭さを見ることができる。それは、日本人ではとても理解できないものである。独立後、12世紀、13世紀、14世紀に建てられたタリンの街はよみがえった。EUとNATOへの加盟を強く望み、それも実現した。歴史的にドイツ文化の影響を強く受けたエストニア人の教育レベルは東欧で最も高く、北欧諸国と連携しながら経済発展を遂げている。私の友人はエストニア語を含めて、7ヵ国語ができる。理由を聞くと、小国の民族は外国語ができないと、生きていけないと答えてくれた。エストニアの友人たちが平和で、幸福であることを強く願っている。 河合七雄
# by shichio_kawai | 2010-09-06 18:58 | 音楽
2010年 09月 04日
ヨーロッパとアメリカでは、1983年からデフレ時代が始まった。その要因は、1891年に普仏戦争が終わり、第一次世界大戦までの束の間の平和が訪れ、人類は初めて世界市場を経験したからである(クチンスキー)。イギリスの産業革命がヨーロッパとアメリカに拡散し、おびただしい技術革新とインフラ整備によって、デフレ下の経済成長を経験することになる。科学や技術の革新は、一国内ではなく、国際的な競争と協力が得られて、初めて発展する。その意味で、19世紀後半の世界市場の形成は、技術革新と科学の創造に取って優れた環境を作ったと言える。 この時期に著しい動きを示したのが鉄鋼である。この時期、クチンスキーの指摘によれば、鉄鋼生産は70万トンから2800万トンに増加した。これは、高炉の抜本的な改良と炭素量の少ない強靭な鉄鋼を作るための転炉の発明によるものであった。鋼材の価格が半分になると同時に、新しい消費市場を生み出した。建築技術では「鉄骨鉄筋コンクリート」の建築法を生み出し、大都市の様相を一変させた。これまで脆い鋳鉄を使っていた鉄道・船舶、機械類の素材がすべて鉄鋼に置き換えられた。これは膨大な社会資本の形成に貢献した。同様に、大量の兵器を生産する技術を生み出した。 19世紀の技術開発のプロジェクトの中で、電力ネットワークほど経済的・技術的・科学的に強烈なものはなかった。1880年から電力ネットワークの建設が始まり、個人の生活、地域、オフィス、金融機関、工場をつなぐネットワークとして成長する。電力ネットワークを基礎として、初めて巨大な近代工業が発展する。電力の拡大は個人の生活、経済活動や社会のあり方を根本から変えた。エジソンは直流送電を試みたが、送電線が長くなればなるほど、電力損失が多くなり、それだけコスト高となって、市場を見出すことが困難になった。交流と変圧器を利用すれば、効率的な送電が可能になった。単相から多相交流への実用化が進んだ。当時、電気工学という分野はなく、交流システムの研究は物理学者が推進し、それに機械工学の専門家が加わった。電力システムの実現を通して、新しい分野である電気工学が誕生する。 一八九一年、ネッカー川のラウフェンに建設された水力発電所から四万ボルトの高電圧電力が一七五キロメートル離れたフランクフルト博覧会へ送電され、博覧会に光と電力による人工の滝を演出した。新技術はドイツ人の間に熱狂を巻き起こした。一方アメリカでは一八九三年にシカゴで多相万能電気供給システムの実用化が証明され、一八九五年になるとナイアガラ瀑布の水力を利用して発電した電力をバッファローに送り、冶金工業やアルミニウム電解工場を興した。 直流から多相送電に移行する時期に高等教育機関が多く設立され、初めて電気工学の講義が始まった。一八八三年、ジーメンス社の社長ジーメンスは政府に「研究こそ技術進歩の堅固な基礎である。一国の工業は、科学的研究の最前線の中にいなければ、国際的な指導的地位に達し、かつ自己を維持できる希望は持てない」と訴えた。彼は基金を出し、一八八七年に「国立物理工学研究所」を設立し、高名な物理学者ヘルムホルツが初代所長に就任した。このころから企業は巨大研究所を競って設立する。 同時に、大陸を横断する大規模な電信網、さらには太平洋・太平洋と両大洋の海底に敷設された「海底電線」のネットワークの連結で、地球的な規模の通信が完成した。個のネットワークの連結によって生まれものは、世界全体の経済活動の同期化である。世界のどこかの金融市場で発生したパニックは、短時間に他の大陸の金融センターに広がる。1873年に、同時恐慌が発生したのは、ネットワークが、1859年大西洋海底電線の完成で陸上電線と結ばれた結果である。 金融センター間の資金の移動が、低コストで、確実に、安全に可能となった。ロンドンとパリの間の資金のやり取りは、電信為替という確実な、安全なコストの安い方式を導入した。それ以前のこの両都市の金融センターの間の資金のやり取りは、金貨・銀貨の輸送というコストのかかる方式を採用していた。英仏海峡電線の開通によって、ほとんど一瞬のうちに両センターの間の資金の移動が可能になった。 経済活動の同期化は、国際金融市場の成立を促した。ロンドンのロンバート街は、英国の金本位性の採用と関係して、世界全体の長期・短期の資金の集散の中心として、クローズアップされた。世界の貿易決済に必要な資金は、ロンドンの主要銀行にそれぞれの政府が保有している預金口座の間の決算によって可能になった。世界各国のインフラ整備を行うために、ロンドンの証券市場で金融商品への投資を通じて資金を集めた。 電信、汽船、鉄道のネットワークが世界市場を変貌させた。世界市場が形成され、多くの主要国が参加して、地位を確保しようする努力の結果、世界市場には大量の商品が流通するようになった。蒸気機関の発明と、鉄鋼技術の革新は、蒸気船と蒸気機関を原動力とする鉄道を誕生させた。汽船のネットワークの誕生で、世界で初めて国際的な商品を大量に、安全に、安いコストでの運航を可能にした。 陸上では、鉄道が次第に普及し始めた。米国大陸では、1869年大陸横断鉄道の第1号、ノーザンパシフィックが開通し、続いて2本の大陸鉄道が完成した。1903年、欧州大陸では、サンクト・ペテルブルグからウラジオストックまでのシベリア鉄道が完成する。大陸横断鉄道の誕生で、農産物を含めた大量の商品を生産地から消費地まで安いコストで時間どおりに安全に輸送することが可能になった。この結果、デフレの原因の一部である農産物の急落をもたらす。 海上交通については、運航の確実さと、本格的な時間の短縮を図るために、大規模な運河が完成する。1869年にスエズ運河が開通、1914年には、30年余にわたって工事が続いたパナマ運河が完成した。これによって欧州からインドを含めた東アジアの航路を短縮した。パナマ運河の完成は、アメリカ大陸の大西洋と太平洋岸を直結させたのと同時に、世界の海運業に強い刺激を与えた。 驚くべきことに、このような大規模なインフラの投資がほとんど民間企業によって行われた。スエズ運河のあるエジプト政府は資金がなく、パリに本社を持つ国際スエズ運河株式会社が資金を調達した。米国の大陸横断鉄道も、すべて民間会社が必要な資金をロンドンの金融市場での起債で賄った。 その背景には、デフレで発生にする膨大な余裕資金が世界中に溢れていたという事実がある。デフレになれば、資金という商品の代価である金利は低下する。デフレ下では、金融市場において資金の過剰供給が発生する。それは自由な金融市場での資金のやり取りから生まれる長期金利が低下する。その結果、大型のプロジェクトに必要な長期資金を債券で調達できる条件が整備され、その資金は大型プロジェクトに提供される。 世界の主要都市の再開発もこの時期に始まる。ウォール街を中心とした高層化と再開発が進行する。マンハッタンの中央を貫く地下鉄の建設もこの時期に開始され、巨大な人口の集中を可能にした。同じ動きが、ロンドンでもパリでも、世界の主要都市で展開された。大都市の急速な再開発によって、経済活動はいっそう密度を増し、それが世界の経済活動に強い刺激を与えた。コンクリートからヒトへの単純なスローガンで、コンクリートを用いた都市の再開発が軽視されている。都市は、経済をけん引する大きい力なのである。 21世紀の第2のグローバル化によって、新興国のインフラ整備が急速なスピードで進む。それには重厚長大の技術と産業が必要であり、日本が貢献できる分野である。そのためには、日本の市場の動きを世界の市場の動きに合わせることが不可欠である。現在の民主党の経済政策は世界の市場の動きに逆行したバラマキによる国内保護である。これでは、経済が衰退することを、歴史は何度も教えている。農村の発展は、個人補償によるバラマキではなく、農業の保護を取りやめたFTAをアジアと次々と締結すべきである。競争の中で近代化農業の建設を目指す。その結果、1個10円のおにぎりができると生活は一変する。 河合七雄 参考文献 『ロンバート街』オルター・バジョット著、初版1873年、翻訳宇野弘蔵、岩波文庫、 1941年 創成期のロンドンの金融の中心ロンバート街を生き生きと描いている。 『世界経済の成立と発展』など、J.クチンスキー、初版1967、翻訳久保田英夫 評論社、昭和45年 人類が初めて世界経済と世界市場を経験した、その本質について述 べた最初の著作である。東独の経済学者、「正統派の異端者」と呼ばれ、 粛清の危機に見舞われる。 『世界大規模投資の時代』長谷川慶太郎、2007年、東洋経済 19世紀、デフレ時代の技術革新とインフラ投資を記述。
# by shichio_kawai | 2010-09-04 14:51
|